「先輩とボク」に登場する変態、堀江牧人を主人公にハードな小説を書いてみるよ☆ ・・・手向けた花の数なんて、覚えちゃいない。 空に木霊した嘆きの周波数帯なんて、無意味だろう?それと同じ事だ。 大切なのは、そのものじゃなくって、そこにある意味だ・・・ってな。 「泣かなくて良い、悲しむ必要は無い」 今際の極に、じいさんは言ってたよ。 小さかったオレ達は、ただ泣く事しか、知らなかったんだが。 ・・・そのか細い泣き声の周波数を数えたって、意味無いだろう? 彼岸を渡る老人を前にして、そんな無粋な事言うのかよ。 「・・・なんで、死んじまうんだよ・・・」 オレは思わず、口に出していた。 隣で只泣きじゃくる雪乃の肩を、抱きながら。 息も途切れ途切れのじいさんは、事切れる直前、こう忌々しく、言い放った。 「あの糞野郎どもが・・・俺を殺したんだ」 その切ない声が、忘れられない。 そうして24時間後にはじいさんは白い骨となり、オレはフラジャイルなこの世界をつくづく噛みしめた。 そうさ、俺達あまりにもあっけなく、逝っちまう・・・ってね。 「ハルカ?そろそろ行きましょ・・・」 純白のワンピースに、胸元の大きなリボン。 いとこの雪乃が、その彼氏のハルカを連れて、巡礼へ。 「さて今日は・・・どこかしらね?」 「・・・ボクに聞かないでくださいよぅ・・・」 ちょっとすねたように答えるハルカ。その横顔、愛らしい。 たまたま、オレと同じ場所に向かうらしい。 結局オレと二人は、電車で乗り合わせた。 特急の向こうの席の仲むつまじくもどこかイカレたカップル・・・ハルカは、女装している・・・は、幸せそうに肩寄り添った。 オレ一人、窓の向こう。 この場に似合わない、ヘヴィデューティなチタンの鎖を弄び。 ただ走り去る、弾丸急行。 駅を降り、雪乃とハルカは向こう側へ。 オレは砕けたピースを探すような目をして、二人に背を向けた。 「マキトさーん!いってらっしゃーい!!」 ノンキなハルカの声。 「おうよ!テキトーにやってくるから・・・」 背を向けたまま、腕を天高く上げて。 さて、時間だ・・・。 こんなときは、大きな木の下にもたれかかるに限る。 まだ、日差しが強すぎる・・・太陽の光をかき消して、月が無垢たる夜の女王として君臨するのをひたすら待ちわびるのだ。 ・・・深夜。 ようやくだ、「アイツら」がねぐらから姿を現す時間。 オレは一人、街を放浪していた。 目に付き刺さるネオンに、クルマの騒音。雑踏。 どれを取っても、オレが死ぬほど嫌いなヤツだ。 酔っ払いのリーマンが、オレになぜかからかいの声をかける。 「よぉニイチャン!元気してっか?」 オレは笑って、 「オマエさんこそどうなんだよ・・・」 と、からかい返して見せた。 「俺ぇ?ぜぇっこうちょうに決まってんじゃん・・・」 そして酔っ払いはすぐ目の前から消えた。 ・・・目の前を、影が横切った。 オレはチタンの鎖をその影の首にかけ、引きずり倒す。 「よぉ本家の犬!てめぇよくもオレの居場所がわかったじゃねーか・・・」 ・・・イラ付く。脳の血管が、収縮する。 身軽そうな黒ずくめの少年・・・コイツが、オレへの刺客だったってわけ。 年齢はハルカと同じくらい・・・かな? 「・・・オマエ、」 「マキト・・・貴様を本家の命により、抹殺する」 おぉ怖い、バタフライナイフが懐から鈍くきらめきを現す。 光の筋一閃、だが軽い動作でかわしてみせる。 ・・・余裕・・・そう戦いでは、「余裕」こそがアドヴァンテージを握る鍵だ・・・特に、こういうタイマンでは、ね。 そしてオレは、懐から虎の子のハジキを取りだす。 「・・・クッ」 ナイフを振りかざす後の一瞬の隙を付いて、オレは小僧のドタマに拳銃を突きつけた。 そしてにっこりと、笑いながら。 「おい小僧、オレみたいなのとやるときはよ〜く自分の力量わきまえながら戦術立てないと死ぬぜ?」 自分が死の淵に立っていると言うのに、気丈にも小僧はナイフをもう一回オレに向けた。 だがブルってマトモに向けられもしない・・・可哀想に思って、蹴り飛ばしてやった。 コイツには死の恐怖を実感する時間が、必要だ。 オレは微動だにせず、ただ拳銃を突きつけ続ける。 少年はまだやる気だったようだが、逃げられないとしって顔が青ざめてきた。 お、冷や汗・・・目のあのギラ付いた光が、懇願するような涙目に変わってきた。 いいねぇ、こういうの・・・オレは嫌いじゃないぜ。 「あー、お仕置きはお終いだ。とっととお家に帰んな、坊や?」 ・・・ハナッから殺すつもりなんかありゃしない。 オレが殺らなきゃいけないのは、堀江家本家の人間だけなんだからな。 そんなこと考えながら、オレは拳銃をガキから離した。 すると小僧、さっきまでの威勢の良さが嘘のように、しおらしく泣きだした・・・。 女の涙は信用しないが、ガキの涙は来るものがある・・・おいおい甘チャンだな、オレ。 「・・・ココは日本だぜ?オレみたいなアンチャンがチャカなんぞ持ってるわけねーだろが」 オレは足元に銃の形をしたそれの引き金を引いて見せた。 バン、と情けない音と共に発射される、6mmのBB弾。 その様子を見て呆然とするガキの表情の傑作な事!! あー、良いモン見れた・・・今日は適当に引き上げるか。 「このままで食い下がれないんだよ」 驚くほど無機質な、冷たい声。 あの小僧のだ・・・ガキはどこからか日本刀を取りだし、オレに斬りかかる。 甘かった・・・やっぱ子供大好きは、こう言う事やっちゃあいけないな・・・オレはロリコンでもショタコンでもないけどな。 月の光が反射して、怪しく輝くブレード。 そこに写る少年の瞳に、オレは懐かしい面影を見た、気がした。 「・・・ーーーーーーーーーーッッ」 少年の顔が苦痛に歪む。 我ながら酷い事したよ・・・斬りつけ返すなんてね。 少年の腕からは鮮血が噴き出す。とはいえ、死ぬほどじゃあ、ないだろう・・・。 にしても・・・あんなに斬られたらイテエんだろうな・・・あー、イヤだイヤだ。 でも、言っとくけどなぁ・・・ 「・・・ワリイけど、オレのせいじゃないからな?折角見逃してやろうとしたのにはむかった、オマエさんがわりぃんだ・・・」 そしてうずくまる少年にウィンクして。 「ま、まだまだオマエさんも修行が足りないってこった☆」 オレはガキから奪い取った日本刀を脇に流れる川に放り投げると、そいつを後にして街に戻った。 「そーいえばマキトさん、昨日は何してたんですか?」 結局、街中でコイツらに会っちまった。 あの後公園で一眠りしてたオレは、メシを食いに街に戻るとばったり雪乃とハルカに出くわした。 「・・・なんでもねーよ」 「えー、どうしてボク達には教えてくれないんですか!?」 ムキな表情で問い詰めるハルカ・・・おい、コイツホントに高校生か? 「・・・マキト兄さんは変態だから人に言えないような事してきたのよ」 冷たい視線でオレを睨みながら、愛する雪乃はハルカに言い放った。 おいおい、今度は変態かよ・・・。 ・・・・・・お世辞にも人に言える事では、なかったけどな。 「兄さんはこれから帰るの?」 雪乃が、ちょっとだけ不安そうな顔で、たずねた。 「あ?まだ仕事ってぇヤツが残ってるのよ・・・」 あー、ムカツク。 「ボク達もまだ、行かなきゃいけないんです・・・あ、時間だ」 ハルカが向こうを見やった。電車が出るらしい。 ホームへ駆ける、二人。 オレはただ、手を振った。 電車に乗りこんだ二人も、オレに手を振って。 ・・・さぁて、アイツらがいっちまった。 さてオレは、次はどいつをたずねてやろうかな?