「とどかない、ラブレター」



 あなたのことを好きになってから、毎日書きつづったラブレター。
 今はこんなにも近づいたのに、絶対あなたに届かない、ラブレター。


 「おはようございまーす! 雪乃先輩☆」
 いつも通り、通学路で出会った先輩に、元気良く挨拶。
 雪乃先輩も、
 「あら、おはようハルカ♪」
 って、いつも通りボクのこと、ぎゅっとして。
 「わわッ!? せ、先輩・・・・・・人が、人がぁ・・・・・・」
 ・・・・・・雪乃先輩ってばいつも周りのこと、おかまい無し。いつもドキンって言ってるボクの心臓、ドキドキ。

 気が付けば、通学路にはいつものみんな。
 明るく話しながら、あっという間に学校に着きます。
 そしていつも通りに授業を受けて、あっという間に時間は過ぎて。
 でもいつもと違うのは・・・・・・ボクのこの、心臓の鼓動。
 どうしてだろ? 雪乃先輩に挨拶されて、ものすごく切なくなっちゃって。
 こんなにも先輩は近くにいるのに、なんだか遥か何万光年も離れてしまったように感じて・・・・・・。

 学校が終わって、いつもの通り家路につきます。
 今日はバイトも無いし、雪乃先輩といっぱぁい話をしながら、二人仲良く並んで歩く。でもこんなに近いのに・・・・・・ううん、こんなに近いからこそ、無性に切なく感じます。
 原因はよくわからないけれど。

 「じゃあね、ハルカ? ・・・・・・また、明日」
 雪乃先輩の家の前で、お別れ。
 先輩は別れ際、さみしそうに笑いながら言いました。その顔に、心臓を貫かれたような気分になって、でもそれをごまかすようにボクも笑顔で、
 「うん・・・・・・さよならです」
 って、明るく返す。
 でも本当はさみしくて、今にも泣きだしそうなくらいだったんです・・・・・・なんでかは全然、わからないんだけど。


 家に帰ると、今日は誰もいませんでした。
 ぽつーんって、ボク一人。
 窓から差しこむ夕焼けを眺めながらソファーの上で正座してると、さっきの先輩の言葉が、耳の中に木霊して。
 ・・・・・・ちょっぴり、涙が出てきた。

 太陽が地平線に隠れてお星様が恥ずかしそうに瞬き始める頃、ボクは一人自分の部屋。
 久しぶりに掛けたBGMは、ソナタ・アークティカの「サン・セバスチャン」・・・・・・。前に秋山君に借りたCDが気に入って、でもちょっぴり切なくて。
 太陽のようにまぶしいあの人は、今は別の誰かを暖めている・・・・・・叶わなかった遥か昔の恋を、頭が白くなった頃回想している。そんな歌詞の曲です。
 ・・・・・・いけない、いけない。なんだか無性に切なくなってきちゃいます。すぐにコンポを止めて、でも何もすることが無いからマックの電源を入れます。
 そして、いくつかのお気に入りのホームページを眺めて、その内ちょっと眠くなってきちゃったから、お昼寝のつもりで・・・・・・。

 目が醒めたのは、ビックリするくらい青い月の光のシャワーに包まれて。
 時計に目をやると、もう夜中の2時・・・・・・机の上には、お母さんからの書き置きが。『遙へ 疲れちゃったのかしら? そっとしておきます。目が醒めたらシチューを用意してあるから温めて食べてね。 母』
 ・・・・・・なんとなくその紙をそっと、頬に当てて。
 ただの紙のはずなのに・・・・・・とっても温かく思えて、ちょっと涙が、こぼれちゃったりして?

 優しい月の光の下、無性に切なくなっちゃって・・・・・・ボクは机の引き出しからそっと便箋を取りだしました。
 次に手に取ったのは、ちょっと高い万年筆。キャップを慎重に外して、便箋を一枚取って・・・・・・そしてこの胸のざわつきを、そのまま便箋に書きつづりました。
 大好き。
 大好き。
 どうしようもないくらい大好きで、あなたの後ろ姿を、表情を、声を思い浮かべるだけでドキドキしちゃって・・・・・・そのうち、泣きたくなるくらい。
 
 ・・・・・・ねぇ、雪乃先輩?
 ボクは一体、どうすればいいのでしょうか・・・・・・?


 「うにゅ〜・・・・・・おふぁようごじゃいます・・・・・・」
 「あらハルカ・・・・・・今日は寝不足? おはよッ、遅刻しちゃうわよ?」
 次の日に出会った先輩は、なんでだろ? とっても明るい顔してた。
 急かされて、手をそっと握られて・・・・・・なんだか、雪乃先輩の元気がボクにも伝わってくるみたいでした。
 朝から精一杯ダッシュ、心臓がバクバク・・・・・・爆発しそう!

 そしていつも通りに授業を受けて、待ちに待ったお昼休み!
 ボクはいつも先輩と一緒にお昼を食べています。今日もいつものように屋上に行くと、雪乃先輩が、
 「ハルカー! こっち、こっち♪」
 って、笑顔でボクを呼んでくれました。
 「はぁ〜い! 今行きます・・・・・・あぅっ!?」
 ・・・・・・転んじゃった。

 雪乃先輩と並んでお食事。
 この時間はとっても楽しくて・・・・・・いつもいろんなことをお話しして、時々先輩はボクの頭を優しく撫でて。
 「・・・もぅっ! 先輩、ボクはちっちゃい子供じゃないんですからね!?」
 なぁんてちょっとムキになっちゃうけど、でも本当は凄く嬉しくて。先輩はそれを知ってか知らずか・・・・・・って言っても絶対バレちゃってるけど・・・・・・。
 「あら、いいじゃない・・・・・・だってハルカってば、可愛いんだもの?」
 なぁんて、にっこりと笑顔で言うんです。
 ちょっとだけ、くやしい。

 ・・・・・・ふと口を突いて出た。
 「先輩・・・・・・届かなかったラブレターや叶わなかった願い事って、一体どこに行くんでしょうね?」
 言っちゃってからすごくヘンなことに気が付いて、一生懸命撤回しようとしたけれど、雪乃先輩はちょっとパニックになっちゃったボクを抱きしめながら、言いました。
 
 「・・・・・・大丈夫、きっとどこかに残ってるから」

 その言葉は酷くさみしげだったけど、雪乃先輩の笑顔はとっても、優しくて。


 今日もボクは、どうにも胸騒ぎが収まらなくて、こうしてラブレターを書いています。
 もう付きあってていつも好きだって言ってるのに、こんなにも近いのに届かない言葉は募って。
 ・・・・・・でも、大丈夫だよね?
 多分届くことは無いけれど、きっとどこかに残るから。
 ・・・・・・そしていつか、きっと・・・・・・。


 「ねぇ、ハルカぁ・・・・・・これ甘すぎ、わたしへのラブレターだなんて・・・・・・」
 ドキィッ!?
 お休みの日、突然現れた雪乃先輩は、ボクの部屋のあれこれを勝手に覗いちゃうんです!
 本棚やタンスの中、ベッドの下にパソコンのファイル・・・・・・ちょっと、あんまりですよねぇ?
 そしてついに見られちゃった、パソコンにもしたためた愛の言葉・・・・・・うぅっ、言葉にするだけで恥ずかしいです。
 でもこの恥ずかしいラブレターの数々を見た雪乃先輩は、真っ赤っ赤だけどすごく嬉しそうな笑顔で。
 「ハルカってば・・・・・・こんな事、わたしに言ってくれれば良いのに。いつも一緒にいるんだし?」
 そしてボクのことをふんわりと、抱きしめます。
 いつも抱きしめられちゃうと温かさと柔らかさにドキンとしちゃうのに、今日は一層強くドキドキしちゃって・・・・・・。
 そして先輩は言ったんです。耳元で・・・・・・。
 「ねぇ、ハルカ? この他にもあったら、わたしに見せてくれないかしら?」

 ボクは恥ずかしさと嬉しさにどきどきしながら、恐る恐る机からラブレターの束を取りだしました。
 コレを見たら先輩引いちゃわないかなぁ・・・・・・って心配しながら、手渡して雪乃先輩の反応を見守ります。
 先輩は真剣な顔してラブレターの束を読み始めました。

 ・・・・・・・・・・・・。
 沈黙が続いて、ちょっと怖い。
 でも先輩は一通り目を通すと、すごく嬉しそうな顔をして・・・・・・突然、ボクにキスをしました!
 あんまりに突然で、心臓が飛び出て体中の血が沸騰しちゃうんじゃないかって言うくらい、ドキドキしちゃった。
 でもそんなボクの様子をおかまいなしに、先輩は嬉しそうにボクに言いました。
 
 「・・・・・・ね? ハルカ・・・・・・ずっとどこかに、残るから。
 そしていつか、想いは伝わるから・・・・・・ありがとね、ハルカ♪」


※俺が書いた4コマ漫画の内の一つを膨らませてみました。


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