「先輩とボク」よもや、ここまで来るとはぁ。 実はまだ99話書きかけだったりするのですが100話先行して書いちゃいますよっと。 ・・・折角だし、今の投票所以外にも何か記念企画描きたいとか思ったり思わなかったり。とりあえず一人で祝ってみますお^^ 100. もう、雪乃先輩と付き合いはじめてそれなりの時間は経っているのですけど・・・。 でも、まだ先輩の事、良く分からないんだよなぁ・・・・・・。 結局、受け入れていくしかないんですけどね、ボクは雪乃先輩が大好きだし! 連日の猛暑で、すっかり脳みそまでゆだってしまいます。 雪乃先輩も、少し参ってるみたい・・・まぁ、マキトさんのこともあるみたいだし。 今日はマキトさんがいないので、 「・・・マキトさん、どうしたんですか?」 と雪乃先輩にたずねると、 「さぁ・・・一週間くらい帰ってこないって。どこ行ってるのか・・・」 って、そっけない返事。 さすがに、マキトさんの事、少しだけかわいそうに思っちゃいました。 ・・・もっとも、いつものマキトさんの行動あんまりに酷いから、すぐに考え直しましたけど。 そして雪乃先輩、うれしそうに言います。 「良かったぁ・・・これで一週間は、わたしとハルカの邪魔ものはいなくなったってことね♪」 まぁ、確かにそうですね? ・・・そういうなり、雪乃先輩はボクに抱きついて。 「・・・あー、こうやってのびのびくっつくの、久しぶりぃ・・・」 なんて、和みきった表情と声で。 ボクはちっとも、のびのびじゃないですよぅ・・・だって、やっぱりなんか照れちゃいますし。 でも、やっぱりうれしい。 そしてすっかりご機嫌な様子で、雪乃先輩は言います。 「ねぇハルカ・・・今日はどこ、いこっか?」 結局ボクたち、行き先なんて決めないんですけどね♪ でも、出掛ける前に、雪乃先輩はなにやら考え込みながら、タンスをジーッと見ています。 ・・・何考えてるのかな。ちょっときになっちゃう。 先輩はしばらく何か考えているようでしたが、突然思い立ったように。 「ねぇハルカ!ちょっとコレ、着てくれる?」 と、差し出したのは、白いミニスカートでした。 ・・・・・・はぅっ。 確かにはいた事がまったく無いわけじゃありませんでしたが、でもそれは雪乃先輩のお部屋の中とか、あんまり大勢の目に付かない所でいつものメンバーの前で披露するくらいで、街中でなんて・・・・・・。 だって、コレじゃパンツ見えちゃうじゃないですか!? コレは、流石にぃ・・・・・・。 だからボクはちょっとむくれて、言ったんです。 「雪乃先輩!!ボクは男ですよッ!?」 「だからこそじゃない♪」 ボクの必死の訴えに、雪乃先輩はにっこり笑顔で返します。 ・・・うわ、あんまりだぁ。 「せ、せんぱぁい・・・コレじゃパンツ、見えちゃいますよぅ・・・・・・」 そしたら絶対男って、バレちゃうじゃないですか・・・下着見られるのだって恥ずかしいのに、ましてや女装してるのがこんな形でバレちゃったら・・・・・・。 ボクもう、人前を歩けません!! でも雪乃先輩、わかってくんないんです・・・・・・。 「だから気を付ければ良いんじゃないかしら?ハルカ可愛いし、バレたってだぁれもそんな事指摘なんて出来ないわよ・・・わたしが一緒にいるんだし」 なんて、いうんですよ? ・・・・・・でも、雪乃先輩にお願いされちゃうと、ねぇ・・・・・・。 もう消えたはずのシロのしっぽが、ぶんぶんと勢い良く振られている気がしてきて。 あぁッ、もうまったく、先輩ったら!! 「短いスパッツあるから、それ穿けば幾分かはマシになるかなぁ・・・」 と、着替え一式を差し出します。 ボクはそれを受けとって、着替えます。 一応きちんと隠れるように、カーテンで仕切ってあるのですが。 でも、雪乃先輩がにやにや見つめてる気がして、ちょっとドキドキしちゃう。 それに、このカッコ・・・・・・ねぇ。 足が丸出しで、さすがに恥ずかしいです・・・・・・。 着替え終わってカーテンを開けるなり、雪乃先輩は歓喜の声を上げました。 「うわぁ・・・ハルカ、やっぱ似合う・・・足、キレイ」 ちょっと感激してます。 ボクは恥ずかしくて恥ずかしくて仕方ないのですけど、でも雪乃先輩が顔を真っ赤にして喜んでくれてるからなぁ・・・・・・。 「じ、じゃあ行きましょう!?」 ボクも顔を真っ赤にして、雪乃先輩に手を差し出します。 雪乃先輩も、ボクの手をとって。 でも差し出したのはボクなのに、先導するのは雪乃先輩なんですよねぇ・・・・・・? ・・・・・・まぁ、コレがボクたちらしいと言えば、まったくその通りなんですけどね。 うぅっ・・・・・・やっぱ、恥ずかしい。 足にはモロに風が当たるし、スカートはちょっとの拍子でめくれちゃいそうで手が離せないし、なにより行き交う人たち全員の視線がボクに突き刺さってくるみたいで・・・・・・。 ボクは雪乃先輩にすがるようにしながら、歩きます。 そんな様子のボクを見て、雪乃先輩が満面の笑みで言います。 「ハルカ、かわいいぃ〜♪こんな可愛いコ連れて歩けるなんて、ホンット自慢したくなっちゃうなぁ・・・・・・」 本当に、うれしそう。 でも、自慢なんてぇ・・・・・・。 ボクは、男の子なんですからねッ!!? 「今日は・・・そぉねー、少しアクセサリーでも見てみない?」 なぁんて、足元を気にしっぱなしのボクに、雪乃先輩は明るく言いました。 ・・・アクセサリーかぁ、そういう御店には行った事無いなぁ・・・ってぇ!? そりゃそうじゃないですか!だってボク男ですよ!? ・・・う〜ん、最近慣れてきちゃったせいか、ちょっと怖いなぁ・・・・・・。 でも、今日はこのカッコだし、たまには雪乃先輩と一緒にまったりと見てみるのも、悪くないかなぁ・・・って、思ったりして。 「良いですね、行ってみましょう!」 と、言った矢先。 「あ、そこのかわいこチャンたちィ〜」 ・・・・・・うわ、時代がかった不良連中が。 うぅっ、怖いよぉ・・・・・・。 「あら、あなた達何?わたしたちコレから用事があるんだけど・・・」 雪乃先輩は、全然動じません。 ボクの手を引いて、さっさと立ち去ろうとします。 けれど不良たち、ボクたちの前に回りこんで。 「おいおい、つれないなぁ・・・良いじゃねーか、遊ぼうぜぇ!?」 うわ、いやらしいニヤニヤがおが、怖いです・・・。 そして、不良の一人がボクの顔を覗きこみます。 学ラン着てるのに、タバコ臭い・・・・・・。 「・・・ん?オマエ前に見た事が・・・」 あぁッ!? 前にもこいつら、ボク達に絡んで来たことがあったっけ・・・。 あのときは雪乃先輩が交番の前まで誘導して事なきを得たのですが・・・今回は、ちょっと無理。 気がつけば、取り囲まれてしまって。 周りの人たちも、見てみぬふりで、足早に立ち去ってしまいます。 どうしよう・・・・・・。 「なぁなぁ、遊ぼうぜぇ〜?」 不良の一人が、ボクの足を撫でてきます・・・。 「ウワッ!?」 ボクは、情けない声で驚いてしまいます。 うぅっ、怖い・・・どうしよう、どうしよう・・・・・・。 だって、男だってバレたらそれはそれでただじゃ済まなさそうだし・・・・・・。 恐怖で心の中がいっぱいになってしまった、そのとき。 「・・・わたしのハルカに、何してんのよアンタぁ・・・・・・ッッッッ!!!?」 ・・・・・・雪乃先輩が、ものすごい形相で不良たちを睨みつけます。 うわ、ちょっと・・・・・・不良たちより、怖いかもぉ・・・・・・。 「・・・なんだぁ?オマエやるってのかぁ!?女のくせによぉ」 と、雪乃先輩につっかかった不良は次の瞬間、すっかり青い顔に・・・・・・。 雪乃先輩の目を、直視してしまったのです。 ・・・瞳孔がすっかり開いて、怒りが燃えているような、恐ろしい瞳。 そして重々しい空気をまといながら、雪乃先輩は死刑宣告するような口調で、言いました。 「・・・わたしたちに、かまうな・・・・・・ッッッ!!!!」 それからは本当に、一瞬でした。 気がつけば、周りを取り囲んでいた不良たちは全員、ブッ倒れていました。 何が起こったのかわからなくてまごまごしているボクに、雪乃先輩が抱きつきました。 「ハルカぁッ!!?」 その声は、本当にボクを心配していて。 目が、うるうるしてる・・・・・・。 「ハルカ、大丈夫?何にもされなかったよね?よかった、安心したぁ・・・・・・」 ボクを強く強く抱きしめながら、泣きだしちゃうんです・・・。 ボクは本当に呆然として、 「・・・雪乃先輩?」 とだけ言うのが、やっとでした。 雪乃先輩、ボクの頭を撫でまわして、 「よかったぁ・・・よかったよぉ・・・無事で、安心した・・・・・・」 なんて、泣き崩れちゃうんです。 でも、ボク何もされてなかったし・・・・・・。 少し冷静になって、辺りを見まわすと、不良たちはすっかりのびています。 ・・・・・・コレホントに、雪乃先輩が一人でやっつけちゃったの!? でも、そんな雪乃先輩は、本当に小さな子供みたいに、泣いてしまって・・・・・・。 ・・・・・・こんなとき、ボクどうすればいいか、分かりません・・・・・・。 「雪乃先輩ッ!ボク、ホントに大丈夫ですから・・・・・・」 困り果てて、叫ぶように言いました。 するとようやく、顔を上げて。 「・・・本当?」 もう、涙で頬が濡れて、すっかりくしゃくしゃの表情で・・・・・・。 見てるボクが、辛かったんですけど・・・・・・。 ボクはハンカチを差し出して、少しでも安心してもらおうとにっこり笑います。 「ボク、先輩のお影で無事でしたから・・・ね?」 すると、そのハンカチでぐしぐしと顔を拭いながら、 「・・・・・・本当?」 って、小さなコみたいに、言うんです。 ボクの方が、困惑しちゃって・・・・・・。 でも、こくりとうなずいたら。 雪乃先輩、やっぱり純粋な小さな子供みたいな笑顔で、 「ハルカぁッ♪」 って、また抱きつきます。 ・・・・・・コレじゃ、どっちが助けられたのか、わからないですよ、ねぇ・・・・・・? そんな、どうしようもなくなっちゃったボクたちの背後から、影がむっくりとたちあがります。 どうやら、不良グループのボスらしくて。 「てんめぇ・・・・・・女の癖にィ・・・・・・」 やっとこさ立ち上がっているのですが、その目は怒りに燃えて、怖い・・・・・・。 そして拳を振り上げて、雪乃先輩に突撃してきます!! 「雪乃先輩!!後ろッ!!?」 ボクは、雪乃先輩が殴られちゃうと思って、手で顔を覆いそうになったのですが・・・・・・。 ・・・裏拳一閃。 雪乃先輩が拳を振るうのは速すぎて、全然見えませんでした。 不良の顔に、ありえないくらいめっこりと、雪乃先輩の白くてキレイな手が、めり込みました。 そして、スローモーションのように、不良の身体は宙に舞い、10メートルくらい・・・そんなはずは無いと思うんですが、そのくらいに見えた・・・・・・吹き飛びました。 ・・・・・・うわ。 雪乃先輩はいつの間にか、怒りも悲しみも消えうせて、いつもの調子で言います。 「ハルカ、興ざめしちゃったね・・・・・・マスターのトコ、いこっか?」 そして不良たちを振り返る事も無く、すたすたと元来た道を、ボクの手を引いてゆきます。 ボクは思いっきりうろたえて、 「雪乃先輩ッ!?」 とだけ、言ったのですが・・・。 「ん?なぁに?」 と、ボクを笑顔で見つめ返すだけ。 ・・・・・・何か言うのは、止めておこうかなぁ・・・・・・。 「・・・なんでもないです」 ちょっとうつむき加減に、フクザツな顔で言うと。 雪乃先輩はにっこり笑って、 「フフッ、ヘンなハルカぁ」 と、可愛く言いました。 コレが、一瞬にして10人近い屈強な不良たちを叩きのめした人の態度とは、とても思えません。 「じゃあ、いこッ!!」 と、雪乃先輩はボクの手を引いて、走り始めました。 まったくもう、雪乃先輩ってば・・・ボクの事になると、すぐムキになっちゃうんだから。 「先輩?まったく、無茶な事しないでくださいね!?」 ボクはたしなめるように、言ったのですが・・・・・・。 「え?なぁに、聞こえないよー!!」 って、ボクの事置いてけぼりで、走っていきます。 「あ、待ってよー・・・・・・」 わわっ、今ミニスカートだった・・・! ボクはスカートを気にしながら、小走りでおいかけます。 「うわぁーん!雪乃先輩、待ってよぉー!!」 「アハハ!ハルカぁ〜、捕まえてごらんなさぁ〜い☆」 まったくもう、雪乃先輩ってば無鉄砲で自分勝手で、いっつもこんな調子なんですから!! ・・・・・・でもボクは、そんな雪乃先輩の事が、と〜っても大好きなんですけどね!! ね、雪乃先輩!! 101. ・・・夢を、見ました。 こう言うとき、ひとはどういうふうに対処すれば、いいのでしょう・・・・・・? 気が付くと、周りは見たこと無い光景。 エメラルドグリーンの空に、七つの太陽。 「・・・雪乃先輩?」 ボクは思わず呼びかけますが、返事はありません。 途方に暮れて、辺りを見まわします。 羽が4枚ある、鳥といえるのかよく分からない生き物たちが、瑠璃色の滝を目指して飛んでいきます。 あんまりに意味が、わからなくて。 ボクはこんなところでひとりぼっち。 泣きそうに、なっちゃいました・・・・・・。 すると、突然。 ズシィィィィンと、地鳴りのような音が。 ぐらりと揺れて、ボクは驚いちゃいました。 そして、黒い影。 ・・・見上げると、二本足の、謎の生き物がボクを見下ろしていました。 「・・・なに?なにィィィィィ!?」 ボクは恐怖に震えながら、祈るように手をあわせて叫びました。 「お願いだから食べないで!!ボク美味しくないよ〜!!」 釣鐘型の身体から3本ツノが生えて、一つ目の、よくわからない、そうこの世には存在しないような生き物が、ボクをジーッと、見つめてるんです。 ボクの声に、その生きものは少しだけ後ずさりしました。 そして唐突に、腰を降ろします。 ズシィィィィン。 ボクの身体が、一瞬少しだけ浮きました。 謎の生きものはあぐらをかいて、ボクの目を、その大きな一つ目で、ジィィーっと、見つめます。 ・・・観察、してるみたい。 そういえば口が無いんです。 釣鐘型の身体の淵には、いくつもひらひらが付いています・・・でも触手みたいな感じでは、ありません。 本当に、よくわかんない。 ジィィィーッ。 なにも言わず、声をあげず、よく分からない生きものはボクを見つめつづけます。 ボクは思わず、問いかけました。 「ねぇ・・・キミは誰?ここは、どこ?」 不思議と、もう恐怖はありませんでした。 見ていると、なんだか不思議と愛嬌があるんです。 いったい、なんだろう・・・・・・。 ボクの問いかけに、彼(?)は、少しだけ身体を揺らします。 でも、ボクに答えてくれているのか、それともただむずむずしただけなのかは、分かりません・・・・・・。 ホントに、不思議な生き物。 気が付くと、七つある太陽の一つが、地平線に沈もうとしていました。 地球の夕焼けとは違う、七色のスペクトルがキレイに分かれた、とっても奇妙な夕日。 「ほぇ〜・・・・・・」 ボクは驚きの声を上げながら、見つめます。 すると謎の生き物も、ボクの声に反応して、地平線に沈む奇妙な太陽を見つめます。 ・・・どう、思ってるのかな。 彼には、この太陽が、どんなふうに見えているんだろう。 ボクの身長の10倍以上、15メートルはあろうかという巨体が、立ちあがって、ジィーッと、夕日を見つめて。 照らされたその姿が、やっぱりあんまりに奇妙で。 ・・・ボクは思わずクスリと、笑っちゃった。 すると突然、ボクの方に向き直り、見下ろす彼。 「・・・なぁに?もう、行くの?」 なに考えてるのか全然分かんないけど、不思議と自然に出てきた言葉。 彼はうなずくでもなく、首を振るでもなく、ましてや突然ボクに襲いかかろうなんてそぶりも見せることなく。 ただ、ボクをじっと見つめてた。 そして急にそっぽを向いたかと思うと、長い長い足をぐーんと伸ばして、あさっての方向へと歩き始めました。 ボクは走って、追いかけて。 「ねぇ、キミはどこへ行くのー?」 と、たずねます。 すると、初めて頭のツノが、動いて歩く先を指し示しました。 その先は、ピンク色の氷の山。 ・・・ようやく答えてくれて、ボクはうれしくなっちゃって。 「・・・ありがとー!!やっと答えてくれたね?」 すると彼は、ツノを小さく振って。 ボクをじっと、見つめます。 ボクは両手を振って、答えるように。 そして奇妙な彼は巨体を身軽に翻して、氷の山目指して歩き始めました。 ボクは、大股で歩く彼に、手を振りつづけました。 彼の姿が、見えなくなるまで・・・・・・。 そこで、目が醒めたんです。 その事を、雪乃先輩に話すと。 「・・・わたしも見たわ?そのヘンな生き物の夢」 と、妙な表情で言いました。 ボクは、驚いちゃって。 でも雪乃先輩の見た夢は、ボクとは全然違ってました。 「だいたい、15メートルも無かったわ?そうねぇ・・・3メートルくらいだった。そいつらが集団でわたしに襲いかかってきたもんだから、思わず蹴飛ばしちゃったのよねぇ・・・・・・」 困ったような顔して、言うんです。 「それにしてもヘンなやつらだったわ?そいつらしゃべってた・・・『ヤヴァい!!ボスを呼ばなきゃ』なぁんて・・・じゃあ、ハルカが会った15メートルの彼が、ボスだったのかしらねぇ・・・?」 「でも彼、やさしそうでしたよ?」 ボクは、あの瞳を、思いだして。 本当に穏やかな目・・・・・・。 雪乃先輩、ますますヘンな顔して。 「じゃあわたしの見たのと、違うのかなぁ・・・・・・」 でも、ひょっとしたら特徴が似てて、全然別物だったのかも。 ふと、思ったり。 「ま、いいじゃないですか・・・・・・」 ボクは、にっこりと笑って言いました。 「そうね、あんなやつらなんか、どうだって良いわね?」 雪乃先輩は、ちょっと不機嫌そうに。 それにしても一体、なんだったんでしょうねぇ? その後ボクたちは、いつものように当ても無く二人でぶらぶら。 ただこうやって、雪乃先輩と手をつないで歩いているだけで、ボクは幸せ。 「ねぇ?ハルカ、今度は『妖怪大戦争』公開記念に『おとぎ奉り』のいろりちゃんの衣装を作ろうと思って・・・」 「・・・『おとぎ奉り』って、なんですか?」 「『まほろまてぃっく』が連載してた雑誌でやってる漫画。ほら、前『怒首領蜂』でラスボス見せたでしょ?あの「死ぬがよい」って言ってるごっついオッサン、あれ描いた人の漫画。帰ったら見る?」 「うんうん・・・でもそれ、怖い漫画じゃないよね?『サイコ』みたいなのだったら、イヤですよぉ?」 「大丈夫よ、学園モノだし・・・」 なんて、話しながら歩いていると、ガードレールの下にさしかかりました。 昼間でも暗くって、怪しい雰囲気でイヤですよねぇ・・・なんか暴走族の落書きとか、よくあるし。 ちょっとビクッとしながら通ると、ふと目に飛びこんだ、見覚えある絵。 「あぁ〜っ!?コレは・・・・・・」 雪乃先輩、大声を上げて驚いてます。 ・・・その絵は、まさに昨日ボクが見た、体長15メートルの謎の生き物だったのです・・・・・・。 「ねぇねぇハルカ!昨日夢に出てきたの、コイツよ・・・・・・でも、なんで・・・・・・」 ・・・雪乃先輩の見た攻撃的な生き物も、こんな姿だったんだ・・・・・・。 「ボクの見た巨人も、こんなのでしたよ?」 「え・・・じゃあ、それって・・・・・・?でもハルカとわたしの、全然違う感じだったよね・・・一体なにィ!?」 雪乃先輩、珍しく混乱してます。 ・・・それにしてもホント、一体なんだったんでしょうね? そして、この絵は・・・・・・? 102. 先輩とボクは珍しく、二人でテレビを見てました。 雪乃先輩、普段は「あんな低俗な番組ばかり・・・まったく、反吐が出るわ」なんて、到底女の子らしからぬ科白を吐きながら、不機嫌そうな顔してるんですが・・・・・・。 そう、雪乃先輩から、言いだしたんです。 「ねぇハルカ、ちょっと見たい番組があるんだけど・・・下、いこっか」 テレビでやっていたのは、アイドルのコンサートみたいな。 可愛い女の子が、歌ってます。 雪乃先輩が、つぶやきます。 「このコ、かわいいよねー・・・・・・」 ・・・珍しい。 先輩、普段芸能人の話なんてほとんどしません・・・そう、ハードゲイくらい。 雪乃先輩曰く、ハードゲイだけは許せるんだそうです・・・それもなんだか、間違ってるけど。 でも、このコは、普通のアイドルで。 雪乃先輩、絶対そういうのキライだと、思ってたんですけどねー・・・。 すると突然、雪乃先輩は思いもしない事を、言いだしました。 「ねーハルカ、このコ男の子なんだって!ハルカも負けてらんないわね・・・・・・」 ・・・エェッ!? この可愛くて、それでいてちょっと大人びた感じの、この人がぁ!? 「中には人気取りのためのウソだろ、なんて言う心無い人もいるんだけどね・・・でも、ホント男の子なのよ、わたし見たし」 ・・・いつの間に。 「たまたまねぇ?街で見かけて・・・やっぱ胸も無かったし。間違い無いなぁ・・・コレは、ね・・・」 って、ヘンな雪乃先輩。 「雪乃先輩って、こういうのが好きなんですか?」 ボクはふと、たずねます。 すると雪乃先輩、大笑いで。 「違うわよー・・・ただ、女装のアイドルがいるって言うから、ハルカのライバルだなぁ・・・って。でも、別に好きなわけじゃないわよ?一般的に見てかわいいなって思っただけで」 そして、ボクをちょっと強引に抱き寄せて、言います。 「・・・わたしには、ハルカだけだよ?」 なぁんて。 まったく、先輩ってばぁ・・・・・・。 でも、安心した。 「・・・ある筋からの垂れこみに寄ると、どうやらこの街の駅でゲリラライヴをやるらしい・・・」 ボクをぎゅっとしたまま、雪乃先輩はつぶやきました。 そして、思い立ったように立ちあがると、ボクの手を引いて、2階へ。 「ねぇ?雪乃先輩、一体どうしたんですかぁ?」 「だから言ったでしょ?ハルカも負けてらんないって・・・だから、ハルカも行かなきゃ!」 部屋に無理やり連れこむと、すばやくアイドルみたいな衣装を取りだしました。 ボクは、ボーゼン。 「・・・なんですか、コレ・・・・・・?」 「だから、突撃。『ある筋』から、楽屋への立ち入り許可ももらったのよぉ〜☆まぁわたし、VIPだからね」 ・・・・・・雪乃先輩、すっごくうれしそう。 だから、ボクは・・・・・・ねぇ。 そういうんじゃ、ないんだってばぁ・・・・・・。 ボクはただ、雪乃先輩が好きだから、女の子のカッコしてるだけなのにィ・・・・・・。 ・・・・・・そりゃあよく似合うって、いろんな人にも言われちゃいますけど・・・・・・。 「じゃあ、いこっ?」 満面の笑みで、雪乃先輩はうれしそうにボクの手を引いてきます。 ボクはあんまりにふりふりなカッコで、どぎまぎしながら歩きます。 駅前には、ものすごい人だかり! トラックのコンテナに大掛かりな音響機器を積みこんで、その真中で、彼が歌ってます。 「トールって言うんだよ・・・北欧神話の雷神Thorにかけてるんだってさぁ・・・」 雪乃先輩が、マニアックな薀蓄を。 でも、北欧神話のトールといえば・・・・・・。 「あのマッチョな戦神ですよね?でも、どうして・・・・・・」 ボクは不思議に思って、たずねます。 すると、雪乃先輩は。 「ウドガルデロックの話、知らない?ロキとトールと、それにトールの従者二人で巨人の館に行って、巨人に化かされるって・・・。そのときトール、女装して館に出向いたのよ?」 先輩、詳しいなぁ・・・・・・。 でも、そんな雷神のイメージとは全然そぐわない、可愛い人が、ステージの上で歌ったりおどったりしてるんだよなぁ・・・・・・。 なんだか、不思議。 ボクと同じ男の子だなんて、信じらんない!! 「そろそろ、時間ね・・・」 雪乃先輩は、おしゃれな腕時計を見ながら、つぶやきました。 するとその直後、ライブは本当に終わりました。 「えぇ!?雪乃先輩、なんでわかったんですかぁ!?」 ボクが驚いて言うと、先輩はニヤリと笑って。 「言ったでしょ?『とある筋からの垂れこみ』って・・・」 うわ、凄い。 雪乃先輩って、芸能関係者とお付き合いがあるんでしょうか? やっぱり、謎な人・・・・・・。 すると先輩は突然ボクの手を引いて、トラックとは反対側にあるビルに歩き始めました。 ボクは突然の事でビックリして、スカートを押さえながら聞きます。 「・・・どうしたんですか?」 「こっちで着替えとかのスペース借りてるのよ。警察にも申請済みだったんだって」 と、裏事情を。 ボクはちょっとおどおどびくびくしながら、ビルに入りました。 ビルの中にはすんなり入れましたが、肝心のトールさんの部屋にはやっぱりいれてもらえそうにありません。 屈強なガードマン・・・SPっていうんでしょうか?とにかく、怖い人二人がトールさんの部屋の前に仁王立ちしています。 「ねぇあなた達、ちょっといれてもらえないかしら?」 怖じ気づく様子も無く平然と、雪乃先輩は言いました。 「なんだ?お前さんは・・・」 ガードマンの人はいぶかしげに聞きます。 「わたし?ちょっとトール君に用があって・・・」 「入場許可書を見せろ」 高圧的な態度のガードマン。 「持ってないわ?でも堀江雪乃っていえばトール君、分かるから・・・」 平然と返しますが。 「持ってないなら通すわけには行かない」 と、怖い顔してガードマンは言います。 ボクはビクビクしちゃいますが。 「まったく・・・融通聞かないってか、なんていうか・・・・・・」 雪乃先輩、呆れがお。 すると突然、スタッフとおぼしき人が雪乃先輩に声をかけます。 「あぁ〜っ!?雪乃さんじゃないですかぁ!」 その今風な人は、尻上がりのアクセントで雪乃先輩を呼びました。 ものすごく馴れ馴れしいというか・・・。 雪乃先輩、怒っちゃうんじゃないかと少し心配してたんですが・・・。 「あら、トージローさん、お久しぶり。元気してました?」 と、雪乃先輩も気さくに話しかけます。 そっか、スタッフとお知り合いだったのかなぁ・・・・・・。 「いやぁ〜、最近きついッス・・・まぁ、トールさんがそれだけ人気者ってことッスからね、頑張んないといけないッス」 と、トージローさんは笑って言います。 ものすごい、人懐っこい笑顔。 最初はちょっと・・・と思っちゃったけど、すごくいい人そう。 「あぁ〜っ!?この人、前にお世話になってるんスよ?通してあげてください」 トージローさんはボクたちが入れなくて困ってるのを思いだして、コワモテの二人にいいました。 するとコワモテのガードマンは、ボクたちをすんなり通してくれました。 「雪乃先輩、すごぉ〜い!!」 ボクは、雪乃先輩が有名人の楽屋にパスできるなんて・・・と思って、ビックリしちゃいました。 雪乃先輩は余裕の笑顔で。 「ま、コレもわたしの人徳っていうやつかしら?」 トージローさんがそれに続けて、人懐っこい笑顔で。 「いやぁ、オレ、マジで雪乃さんには世話んなりっぱなしッスから・・・雪乃さん、VIPッスよ!」 ものすごいうれしそうな顔。 何してあげたんでしょう? 「いや・・・そこまでは」 雪乃先輩、少し困惑してます。なにしろトージローさん、凄いテンションだし。 「わたし、大した事なんてしてないわよ?結局あなたが全部やったんじゃない・・・」 「そんな事ねーっすよ!!雪乃さんは命の恩人ッスよ!まさにVIPっス!VIPPERっス!!」 困りがおの先輩に、ホントに感謝することしきりのトージローさん。 「ヴぃ・・・VIPPERって・・・」 「いや、マジっスよ!!トールさんも会いたがってますからね!喜びますよぉ〜!!」 そういうトージローさんが、大喜びしちゃって。 そしてトージローさんは空いている部屋にボクたち二人を迎え入れてくれると、すぐにペットボトルとコップを持ってきてくれて、用意までしてくれて。 「あ、ありがとうございます・・・」 ボクが少しおどおどしながらお礼をいうと、トージローさんは。 「いや、礼にはおよばねーっス。雪乃さんにはもうすっげえ世話んなってますし・・・キミは、雪乃さんのお友達っスか?可愛いっスねー」 ・・・あ。 今ボク、ふりふりでひらひらなカッコしてたんだったっけ・・・・・・。 「似合ってるっスねー、その服・・・やっぱ雪乃さんがデザインしたんスか?」 ボクのカッコみて、トージローさん一言。 ・・・やっぱ男には、見えないか。安心したような、悲しいような・・・フクザツ。 「そうよ?可愛いでしょ」 と、雪乃先輩はにっこりと笑いました。 ボクは、なんだか恥ずかしくて、気まずくなっちゃう・・・・・・。 「マジイカスっス!今度トールさんの舞台衣装も作ってくださいよぉ〜♪」 と、わざとくねくねしながらいうトージローさん。 ・・・・・・一体、何があったんでしょう? 「アハハ、じゃあ今度。ね?」 雪乃先輩がやさしく言いました。 そしてトージローさんは「ブーン」と言って部屋を出ます。 ドアの向こうから、 「うはwwwww雪乃さんマジクオリティタカスwwwwwwww」 なぁんて声が聞こえます。 ・・・・・・VIPPERって、トージローさんなのでは? ボクは待っている間、スカートをもてあそぶように、足をぶらぶら。 その様子を見て、雪乃先輩が言います。 「あ、ハルカかわいい・・・女の子みたいねー、そうやってるの」 なんて、ニヤニヤしながら。 「えぇ〜!?そうですかぁ・・・?」 ボクはちょっとビックリして、聞き返します。 すると、雪乃先輩満面の笑みで。 「だってちっちゃいコ、そういうことけっこうするじゃない?」 ・・・・・・困っちゃいます。 ボクはちょっとむくれて、足を普通におろすとジュースを飲みました。 そんな様子、先輩はうれしそうに見てるんです。 ジュースを飲みながらちらっとみたら、ものすごくうれしそうで。 「あぁっ、何がおかしいんですか?」 ちょっとドキッとしながら、大声でたずねると。 「え?だってハルカ、かわいいんだもん・・・・・・」 なぁんて。 結局、いつもこの調子。 「雪乃さんとお友達さん、おまたせしたっス!」 と、元気よくトージローさんがドアを開けました。 隣にはさっきの女装美少年、アイドルのトールさんが。 うわ・・・・・・すごいキレイな顔立ち・・・可愛いだけじゃなくて、カッコイイ・・・・・・。 それにひきかえボクってば・・・子供みたいなんだモンなぁ・・・・・・。 はぁ。 トールさんはにこやかに、挨拶します。 「やぁ、はじめまして・・・あなたが、トージローさんの言ってた雪乃さんって人?」 「あら、どうもはじめまして。堀江雪乃です。隣はわたしの彼氏の井上遙君」 と、雪乃先輩もにっこり。 するとトージローさんもトールさんも、ビックリした顔で。 「・・・え!?オマエ男ぉ!?」 ・・・トールさん、ものすごいビックリして、言うんです・・・・・・。 あの、トールさん?あなたは女装美少年アイドルですよね・・・ビックリされるとはぁ。 「・・・遙ってぇの?マジで?信じられねえ・・・なぁ、こんな可愛いのになぁ」 まじまじ、そのキレイな瞳でボクを見つめるんです・・・。 うわ、さすがアイドル。本当にキレイな人・・・・・・。男の子、なんですよねぇ・・・? 「うわ、じゃあ雪乃さんって・・・」 トージローさんも、困惑。 雪乃先輩は、その様子がとってもうれしかったらしくて。 「ウフフ、わたしの自慢のコよ?どうかしら・・・・・・」 不敵な笑みで、トールさんに言うんです。 トールさんはうなりながら、 「う〜む・・・参った、オレより可愛いかも・・・」 なんて。 ボク、困っちゃいます・・・・・・。 「え、あの・・・トールさんって、凄いですよね・・・本当に、キレイで」 ボクはどぎまぎしながら言います。 だって、なんて言ったら良いか、わかんない・・・・・・。 するとトールさんは、ちょっと困ったような、不機嫌そうな、それでいて何故かうれしそうな顔して、言いました。 「オマエにだけは言われたくないよ・・・なんつーか」 ・・・どういう意味なんだろ。 「それにしてもおもしれーな・・・遙オレより可愛いじゃん・・・オマエもアイドルとかならないの?」 なんて、突然。 心臓が口から飛び出るほど、ビックリしました・・・・・・。 でもなぁ・・・困っちゃうよ。 だいいち、ボク、結構こういうのはキライだから・・・。 トールさんは、楽しいみたいだけど。 すると雪乃先輩が、たしなめるように言いました。 「トールさん?ハルカはそういうんじゃないの・・・わたしが趣味で、こういうカッコさせちゃってるだけだから・・・」 というなり、ボクを二人の目の前でぎゅっとして。 トールさんは、 「・・・そっか」 と、少しだけさみしそうに、言いました。 なんだか、スターなんだけど、スターにありがちな傲慢さみたいなのが無い感じ・・・。 「あ、サインとかいる?」 トールさんは突然言いました。 「えぇ!?良いんですかぁ!?」 今日まで、ボクはトールさん知らなかったんですけどね・・・。 でも、なんかホントにものすごい人気みたいだし、なんてヘンな事考えながら。 「いいよいいよ・・・最近忙しくってこんなのもなかなか出来ねーし・・・折角だから」 と、さらさらと色紙に、サインを書きます。 サイン2枚。ボクたちに、手渡します。 その手も白くて、キレイ・・・・・・。 キレイなんだけど、それでいてちょっとたくましさが中にあって、まさに美少年という感じの。 「ありがとうございますっ!」 「ありがとう☆」 ボクと、雪乃先輩は、お礼をいいます。 すると突然、トールさんの電話が。 「・・・えぇ、もう時間?わかった、行くよ・・・。 わり、二人とも仕事入っちゃった。また今度なー☆」 と、お茶目にウィンク。 ホント、キレイ・・・。 トージローさんとトールさんは慌ただしく、部屋を片付けて出発。 その間際、トールさんが戻ってきて言いました。 「あぁ、雪乃さん、遙、オレ本名水無月透って言うんだけどさ、今度一緒の学校に行くんでよろしくなー?オレ1年だから・・・」 と、小さく手を振りながら。 「えぇ、ホントですか!?」 もうボク、ビックリしちゃって、それにドキドキしちゃって・・・・・・。 「ボクも一年生です・・・」 するとトールさん、目をキラキラさせて。 「うは、マジィ!?じゃあ同級生か!やった、友達一人ゲットじゃん!オレ友達100人作るの目標だから、よろしくっ!!」 また、お茶目にウィンク。 さすがアイドル・・・・・・。 「それから、遙って学校でも女装する?そしたら女装仲間なんだけどな・・・・・・」 と言い残して、慌ただしく去っていきました。 二人取り残された先輩とボク。 雪乃先輩は、ニヤニヤしながら言いました。 「ねぇハルカ聞いた?同級生だって・・・凄いね・・・」 ちょっと、驚いてるみたい。 流石の先輩も、アイドルが同じ学校に通う事になるとは思いもしませんもんねぇ・・・・・・。 「じゃあハルカも負けないように、頑張らなくっちゃ!!」 雪乃先輩、袖をまくってガッツポース。 ・・・・・・うわ、二学期の学校生活、ちょっと不安かも・・・・・・。 でも、なんだか今からとっても楽しみになってきました!! ・・・深夜。 どことも知れない土地の高速道路。 路肩にカタナをとめて、マキトはくわえタバコで携帯電話を掛ける。 「・・・おぉ、トールじゃねえか・・・最近忙しいみたいじゃん」 「マキトはぁ?最近ずっとみねーけどさ」 尻上がりのアクセントでマキトの名を呼ぶ、透き通るような少年の声。 「オレかぁ?ま、色々あってさ・・・・・・」 「ふぅ〜ん、またヤバイことに巻きこまれた?」 「巻きこまれたどころか、現在進行形で当事者」 マキトは表情を変えず、おどけたように言って見せた。 「へぇ〜・・・そういえばさ、今日マキトのいとこに会った」 トール・・・水無月透は、雪乃と遙に会った事をマキトに話した。 「で、その彼氏の遙ってのがすっげえ可愛いんだよ・・・マキト、会った?」 「うん。オレショタコンじゃねーけど、マジハルカはかわいいよな・・・」 「マジで?だってオレの事だって可愛いっつってたじゃん・・・オマエそのケがあるんじゃねーの?女装美少年しか愛せない、見たいな」 「ねーーーよ!!オレ雪乃が好きだし」 おどけて話す、マキト。 「・・・オマエさー、今どこいんの?」 真剣な声で、トールはたずねた。 その問いに、 「わり、答えらんねえ・・・」 と、真顔で答えるマキト。 「・・・・・・ヤバイのか。前の魔女の件?」 トールはなにか、知っているらしい。 「・・・さぁ、ね。正直今回は見当も付かないよ、流石のオレも今回はお手上げだ」 「そっか・・・じゃ、気を付けてくれよ。『例の件』、こっちもバッチリ進めるからさ」 意味深げに、話すトール。 「わかった。多分もう3、4日したら戻るから・・・っていっても、オレん家に来るヒマもねーか」 遠くを見やりながら話す、マキト。 「・・・オマエん家?だってドイツじゃ・・・」 「戻ってきた。今は雪乃ん家でイソーロー。半ニートさ」 「今流行りの、ね・・・正直、ちょっとうらやましいよ、ニートが」 最近の忙しさを思ってか、弱気なトール。 「まぁ、そう言うなよ・・・オマエを待ってるコが大勢いるんだぜ?」 「まったくだな!じゃ、行けたら行くよ・・・多分無理だけど」 電話の向こうのトールの声は、少しさみしげに響いた。 「じゃあな」 「あぁ、また」 どちらからとも無く電話を切った。 そして星空を見上げながら、マキトはガラムの煙を深々と吸いこむ。 ・・・最初の頃は舌の感覚が無くなって、肺も痛くなったもんだが・・・。 マキトは紫煙を見ながら、回想した。 珍しく、感傷にふける。 そして、つぶやく。 「あぁ、オレも・・・年食っちまったなぁ・・・・・・まったく」 そして一気にガラムを灰にすると、ヘルメットをかぶり再びカタナに火を入れた。 一気に消え去るテールランプ。その向かう先は、黒々とした闇・・・・・・。 103. 「ねぇ、ハルカ〜」 その日もいつものように二人でお勉強会をやっていました。 その帰り際、雪乃先輩がボクを引きとめて袋を渡します。 中を確認すると、警察や軍隊の制服、のような衣装。 「・・・コレ、なんですか?」 あんまりに唐突だったので、ボクは質問。 すると雪乃先輩はニヤニヤしながら、 「まぁまぁ、明日になれば分かるわ?」 とだけ言いました。 ・・・むぅ。気になるぅ。 家に帰って、早速着てみます。ちょっと可愛いカッコかも・・・う〜ん。 帽子もかぶって、大きな鏡に向かって敬礼なんてしてしまったり。 ・・・でもコレ、なんだろ? 次の日の朝。 「おぉ、ハルカ着てきたのね・・・」 と言いながら、ボクの頭をグリグリ撫でる雪乃先輩。 先輩も珍しく眼鏡かけて、ヘアピンをしています。 それに・・・マフラー? 「アレ?眼鏡・・・」 いつもかけてないから、不思議に思いました。 先輩は笑って、 「伊達眼鏡ってヤツよ♪」 と言います。 そっか、でも珍しいなぁ・・・・・・。 そしてなにより気になる、マフラー・・・・・・。 「こんな暑い日に・・・どうしてですか?」 ボクは少し驚いて聞くと、雪乃先輩は妙にニヤニヤして、 「まぁ、くれば分かりますって♪」 そして先輩はボクの手を引いて、歩き始めました。 ・・・・・・どこ行くんだろ? 果たしてたどり着いたのはゲームセンター。 「さぁー、今日もやりますかぁ・・・」 先輩は一つ伸びをして、両替をすると、音楽ゲームにまずはむかいました。 でも先輩、この手のゲームは苦手なんですよね・・・。 「あぁ、今日も1面も越せなかったわ・・・」 と、ちょっと気まずそうに笑う雪乃先輩。 ちょっと、かわいいな・・・。 次にギルティギアでやっぱりブリジット君を使って連勝したり、いくつか格闘ゲームをやって。 それから今度は、テトリスにコインを入れました。 「久しぶりだなぁ・・・腕、なまってるかも」 と笑いながら、スタート。 始めるなり、恐ろしいスピードでブロックが下に落ちていき、消えていきます。 雪乃先輩の目はジーッと画面を見据え、まるで精密機械のように手がレバーを動かします。 凄い・・・・・・。 そしてあっという間にゲームクリア・・・・・・。 「ま、こんなモノかしらね」 と、不敵な笑みを浮かべて席をたちます。 やっぱり、すごいひと・・・・・・。 「アレ?先輩、今日は旋光の輪舞はやらないんですか?」 いつもなら真っ先なのに。 先輩は、 「まぁまぁ。今日はハルカと対戦してもらうから・・・ハルカはツィーラン使ってね?」 なんて、強引に。 う〜ん、ボクこのゲーム苦手なんだけどなぁ・・・・・・。 果たして、旋光の輪舞の台は人がいっぱいでした。 「今日は新バージョン稼働開始だからね・・・」 と、ちょっと苛立った様子で言いました。 ボクはボーゼンと画面を見ていました。 相変わらずものすごい数の弾が、画面を飛び交います。 「絶対避けらんないよ・・・」 思わず、つぶやきます。 すると雪乃先輩がにっこりと、 「でもツィーランならテイルボムで結構弾消せるから大丈夫よ?」 とアドバイスしてくれます。 ・・・・・・その笑顔が怪しげなんですが。 今プレイ中の人たちの、ミカ・ミクリというキャラクターを使っている人が、後一発まで追いこまれてしまいました。 「あ、ミカの人負けそう」 と、ボクはまた思わず言っちゃう。 先輩は、 「そういえばミカ、ブースターボムが強化されたらしいのよね・・・」 と言って、画面に注視します。 お手並み、拝見・・・でしょうか? すると、ミカのカットイン・・・・・・って。 あの、眼鏡にヘアピン、このカッコって・・・どこかで見た事が・・・・・・って雪乃先輩!? 先輩はニヤニヤ笑っています。 カットインが現れた瞬間、辺りの視線は雪乃先輩に集中します・・・今ミカを使ってた人も、ボーゼン。 そうです、新バージョンで追加になったミカの格好を、雪乃先輩はコスプレしてたんです・・・・・・。 ・・・・・・と言う事は、アレですか。 雪乃先輩の番。 当然と言うかなんと言うか、雪乃先輩はミカを選択します。 ゲーム中操作するのはミカの愛機、「ヴェントゥーノII(Due)」なんだそうですけど。 そしてゲーム開始。一回目は敵の弾を気にしないで果敢に攻めます。 でも、相手の体力半分を残して先輩は後一撃まで追いこまれてしまいます。 「先輩・・・大丈夫なの?」 「まぁまぁ、見てれば分かるから」 先輩は余裕です。 そしてFINAL B.O.S.S.モード「ラストアービター」起動。なんか、一般的なシューティングゲームのボスと言う感じの見た目です。 ・・・ものすごい爆弾をぶち当てて、1ラウンドは先輩が先取。 「おぉ、強くなってる・・・」 なんて、感心。 でもそれよりも、ゲームキャラと同じカッコの先輩に、視線が集中しています。 「じゃあハルカ、あっちの台で待ってて?」 と、余裕の様子で先輩が言います。 ボクはきつねにつままれたような面持ちで、反対の台の列に並びました。 相変わらず先輩は強いです。 なにしろミカのコスプレで集中力を削がれちゃうのかもしれませんが、今日も雪乃先輩に勝てる人はいません。 そしてボクの番。 先輩は、 「いい?Bカートリッジ選択して、レバーを右だからねー」 と、ボクに言います。 言われた通りにツィーランを選択、そしてBタイプでレバーを右・・・。 ・・・・・・やっぱりですか。 「雪乃せんぱぁい・・・」 ボクは呆れながら言うと、先輩はにっこりと 「そういう事でした♪」 と、嬉々として。 ・・・そっか、どうりでボクをジロジロ見る人も多かったわけだ・・・・・・はぅっ。 当然雪乃先輩は強すぎるわけで。 あっという間に1ラウンドを取られてしまいます。 「ハルカ!体力無くなったらB.O.S.S.モードだよ!?」 妙にムキになって、雪乃先輩が向こうから言います。 気を取りなおして、2ラウンド目。3本先取制です。 先輩はのっけからボスを起動、哀れボクの操るオランジェットはあっという間に半分以上も体力を減らされてしまいます。 かなうわけ無いよな・・・なぁんて思いながら逃げまわっていると、もうあと一撃食らったらおしまいに。 「今だっ!」 思わず叫んでしまいました。 B.O.S.S.モード「オービタルソード」を発動すると・・・・・・。 でかでかと、ツィーランのカットイン・・・・・・。 ・・・・・・ツィーラン君・・・なんてカッコしてるんだ・・・・・・どこ隠してるんですか。 ちょっとげんなりしながら、巨大な剣になった機体を操作。すると刃が、雪乃先輩の操るヴェントゥーノIIに直撃。 半分以上体力が残っていたのが、一気にあと一撃に・・・。 ・・・・・・ツィーラン君、すげえ。 そしてこのラウンドは、なんとか勝てたのですが・・・。 当然そのあとはボロ負けでした。 そのあとも雪乃先輩は戦いつづけました。そりゃあ、使用キャラのコスプレしてるんですもん、人だって集まります・・・。 でもしばらくすると、 「ハルカぁ・・・あつぅい」 といって、突如席をたちます。 ・・・真夏にマフラーなんてしてたら、そりゃあ・・・・・・ね。 外に出ると突然、 「ゆ〜きーのさん♪はーるぅーかくぅん☆」 なんて明るい声と共に、ほっぺたに冷たい感触。 「ひゃっぷぅ!?」 突然の感触に、ボクは思わず情けない声。 でも、雪乃先輩は・・・ 「あー・・・つめたぁい・・・どうしたの?明日香・・・」 なんて、ほてった顔しながら冷静に言いました。 「いや、たまたま見かけたから・・・しかしまたすっごいカッコね・・・・・・」 と、如月先輩が感心して言います。 「まったく、今度もコスプレなんですよぅ」 ボクは少しむくれて、言います。 「それにしても如月先輩突然すぎますよ!ビックリしちゃった・・・」 「まぁまぁ。取りあえず飲んでくださいな」 にっこりして、如月先輩はボクたちの頬に当てた缶ジュースを手渡しました。 「さんきゅ〜・・・あすかぁ〜・・・・・・」 情けない声で、雪乃先輩は受けとります。 ボクも、いただきます。 それにしても、ビックリ・・・・・・。 「しっかしまた夏にマフラーとは、ね」 ちょっと如月先輩、呆れがお。 ボクもちょっと呆れちゃう。 「だってぇ・・・今日は『のろんど』新バージョンの稼働開始だったんだもん・・・・・・」 「のろんど?」 耳慣れない言葉に、如月先輩が雪乃先輩にたずねます。 「アレよ・・・『旋光の輪舞』・・・」 相変わらずうだったようすの、雪乃先輩。 「・・・アレか、ツィーラン君か・・・・・・」 ボクのカッコをまじまじ見ながら。 「あー、暑いっ」 と、先輩は突然堪えきれない様子でマフラーをようやくとりました。 「そりゃあそうよ・・・今日何度だと思ってるの?」 ビルのデジタル気温計は、33度をさしています。 「あ・・・そっか」 先輩はジュースを飲んで、ぼんやり言いました。 如月先輩はまた呆れた様子で、 「なに?雪乃もコスプレ?」 と、たずねます。 雪乃先輩は、小さくうなずきます。 「ミカの・・・ほら、主役っぽいの」 といっても、如月先輩には分からないですよね・・・。妙な顔で首をかしげてます。 「元々旋光の輪舞始めたのはミカ目当てだったのよ・・・かわいくてさ・・・でも実際ゲームを見たらツィー君がかわいくて、ねぇ・・・」 もう、聞かれても無いのに独り言。 「・・・やっぱ雪乃ショタコンかぁ・・・・・・」 如月先輩は呆れ果てた様子で、言いました。 「えぇっ!?あのねぇ・・・」 如月先輩の言葉に反応して、雪乃先輩はビックリしながら言います。 「・・・ツィーラン16歳よ?」 「・・・見えない。それに遙君だって・・・・・・」 今度はボクですか。 さすがにそれは怒りますよぅ・・・・・・。 「如月先輩ッ!ボク子供じゃないですよ!?」 ボクもちょっとムキになって、顔を赤くして抗議します。 でも、如月先輩はニヤニヤして、 「ゴメン・・・遙君と雪乃が一緒に歩いてるの見ると、どうしても大学生と中学生って感じに見えて・・・・・・」 なんて。 ・・・・・・ボク、ちょっとへこんじゃう。 そんなへこんだ先輩とボクを放っておいて、如月先輩はたずねます。 「しっかし凄いわね・・・コレ、いつも作ってるの?」 ボクの制服の胸に付いたリボンをひらひらしながら。 雪乃先輩はちょっと得意げに、 「うん・・・だって、こんなの売ってないじゃない・・・それにハルカにはサイズが、ね」 ・・・そんな自慢げな雪乃先輩と対象的に、呆れ果てて呆然とする如月先輩。 まったく、いっつも雪乃先輩の行動には驚いちゃうよね・・・・・・。 ・・・・・・・・・でも、このツィーランの新コスチュームを普通に着てきてしまったボクは・・・・・・やっぱり、もう普通じゃないんでしょうね・・・・・・。 ・・・はぅっ。 ま、先輩が楽しいなら、それでもいいですけど・・・・・・。 104. 今日は雨で憂鬱。 アンニュイな雨音が、窓の向こうから響きます。 「ねぇ・・・ハルカ、」 けだるげに、雪乃先輩がボクに聞きます。 「・・・ハルカって、なんでも話せるような親友って・・・・・・いる?」 唐突な質問に、ちょっとビックリ。 押し黙っちゃいます。 雨音が、沈黙に響いて。 「・・・う〜ん、雪乃先輩がいろいろ話しやすいです」 照れながら、はにかんでボクは答えます。 先輩は静かに瞳を閉じて、 「そっか・・・・・・」 とだけ、言います。 そしてごろん、と寝転んで。 「わたしもねー・・・やっぱハルカだけ、かも」 「え?如月先輩は・・・?」 いつも楽しそうに話してるから・・・如月先輩に、ヤキモチやいちゃうくらいに。 でも、雪乃先輩は妙な表情で答えます。 「明日香は・・・う〜ん、それなりに色々話すけど、でもやっぱバカ話とか雑談とか・・・・・・う〜ん、真剣になにか話すって感じじゃ、ないかも・・・」 ・・・ちょっと、意外。 そして雪乃先輩は、アンニュイな視線で、ボクを見つめて。 「ハルカにはねー・・・なんでも言えちゃうんだ、わたし」 ボクに言ったのかな、ひとりごとつぶやいたのかな・・・。 ・・・ボクを見ているはずなのに、ボクを突き抜けて曇り空見上げるみたいな視線で。 ちょっと、切ない。 ・・・先輩の視線が、ボクに戻った気がした。 この上なく、切なげな瞳で。 ボクの事、見つめるんです。 見つめられてるボクが、切なくなっちゃうくらいに・・・・・・。 ごろん、として。 「わたしね・・・ハルカにだけなら自分の弱いトコ、ぜーんぶ見せられちゃう・・・・・・」 ちょっと潤んだような瞳。 転がったら、おへそがちらり・・・。 ドキドキしちゃう・・・顔が、熱くなってくるよぉ・・・。 「せ、先輩・・・おへそ・・・」 ボクは恥ずかしくなっちゃって、先輩に言うんですが・・・。 「いいよ、このままで」 腕を自分の顔を隠すようにしながら、ちょっと泣いているように、先輩はつぶやきました。 なんだか先輩の様子が心配になっちゃって、ボクはおへそを見ないように、雪乃先輩の顔を見つめます。 やっぱり、切ない・・・・・・。 外の雨音もまた一層、切なく響いて。 「・・・ハルカ」 突然顔を上げて、先輩は言いました。 切なげな表情は消えうせて、悪戯っぽい笑顔で、ボクを見ます。 「・・・雪乃先輩?」 ボクはなんだかうれしくなって、聞き返します。 「・・・雨の日、好き?」 まぁた、妙な事聞くんだなぁ・・・。前にも聞かれた気がします。 「よかったらお散歩しない?」 起き上がって。 今度は、胸の谷間が、見えちゃう・・・・・・。 ボクはまた顔を赤くして、視線をそらしました。 「どうしたの?ハルカ」 「先輩・・・胸ッ!?」 まったく・・・先輩、無防備すぎ・・・・・・。 でもまた、先輩は。 「・・・ハルカになら見られても、良いんだよ?」 なんて言って・・・・・・ボクの事、ぎゅっとして・・・・・・。 心臓が高鳴る。痛いくらい・・・・・・。 「言ったでしょ?ハルカにならわたしの弱いトコ、全部見せられる気がするって・・・・・・」 ・・・・・・ドキドキが止まらない。 外の雨は、無情なくらいにしとしとと響いて。 ・・・・・・この雨音、雪乃先輩にはどう聞こえてるんだろ? 「ねぇハルカ、今日はおそろいで」 顔を真っ赤にしながらドキドキしてるボクの様子なんて気にもとめないで、先輩はタンスから洋服を取りだします。 「・・・ねぇハルカ、着替えだけど、カーテン引く?それとも・・・おねーさんの着替え姿、見たい?」 と、ニヤニヤしながら先輩は言うんです・・・。 ホント、無頓着すぎて、困っちゃう・・・・・・。 ボクは服を受け取ると、黙ってカーテンを引いてしまいます。 そしてカーテンの向こうから、言いました。 「先輩!ボクだって男なんですからね!?そんな事したら、ボク・・・雪乃先輩に・・・・・・なんか、しちゃったら・・・どうするんですか!?」 ・・・そんな事なんて、出来やしないけど。 「・・・大丈夫よ・・・」 先輩は少し申し訳なさそうに、カーテンの向こうから返しました。 ・・・・・・なにが、大丈夫なんだろ。 おそろいの白い洋服で、大きな傘に二人、あいあいがさ。 白いスカート二人、ひらひら。 雨音リズミカルに、しとしとと。 夏の深緑に、水玉キラリ。 「・・・ハルカ、濡れるでしょ、もっとこっち」 傘を持つ雪乃先輩が、ボクにやさしく。 「ハイ・・・」 と、ちょっと照れながらぴったり寄り添うと、先輩は片手でボクをぎゅっとして。 「離さない♪」 うれしそうな顔して、先輩は言います。 ボクも離れたくないから、ぎゅっとくっついて。 「・・・なんかわたしたち、ちっちゃな子供みたいだね」 と、ホントにちっちゃなコみたいな笑顔で先輩は。 ボクもやっぱり、ちっちゃいコみたく満面の笑みで、 「そうだね♪」 なぁんて言って、ぎゅっとしちゃうんです。 雨の街に、傘一つ。 寄り添う二人。 絵になるかなぁ・・・なぁんて、ぼんやり考えてた。 「ねぇハルカ?さっきの話だけど・・・・・・」 面白がって雨音のリズムに合わせてぴっちゃんぴっちゃん歩いてるボクに、突然雪乃先輩が言いました。 「やっぱ明日香には相談してるかも・・・だって、ハルカへの自分の気持ちが分かんなくなっちゃったとき、明日香の一言で自分の気持ちに素直になれたんだもん・・・」 ちょっと照れ臭そうに、でもにっこりと、つぶやきました。 聞いてるボクも、照れちゃった。 「じゃあ・・・今こうして歩いてるのも、如月先輩のおかげなんですね♪」 そう思うと、如月先輩に、感謝。大感謝! 「まぁねー・・・なんだかんだ言っても、ハルカにも相談できない事、意外とあるものね・・・」 深々とうなずきながら、先輩は言います。 ちょっと、さみしいかも・・・。 でも、そうだよね。「スキかそうじゃないか、分からない」って言われちゃって、ボク困っちゃったもん・・・・・・。 それに、ボクも。 「ボクも隼人君に、ちょっと助けられた・・・」 とっさに、つぶやいちゃいます。 思ってる事なんも考え無しに言っちゃう、ボクの悪いクセ。 「ボクも悩んでるとき、『少し恋するの休んだら?』って、隼人君に言ってもらった・・・それで結構、楽になったから」 ボクの言葉に、雪乃先輩はじっと耳を傾けて。 「だってそんな事、先輩には言えないもん・・・・・・」 自分で言っておいて、なんだか恥ずかしくて、情けなくなっちゃう。 でも先輩はにっこりとして。 「そっか・・・ハードゲイ仁科、なかなかやるわね・・・少しは感謝しなきゃね♪」 ・・・「恋を休む」って言葉に、先輩は怒りませんでした。 「そうですよ!せめてハードゲイって言うの止めてあげてください・・・」 ボクは明るく言いました。 そして、やっぱり気になって。 「・・・先輩、今恋をするのを休むって言ったの、怒らないんですか?」 おずおずと、たずねます。 すると先輩はボクの頭をくしゃくしゃと撫でて。 「怒らないわよ・・・だって、わたしの事スキじゃなくなっちゃうわけじゃ、無いんでしょ?」 満面の笑顔で、言いました。 自分の言葉と、今ちょっと心配しちゃった事、少し後悔しちゃう・・・・・・。 「ハルカ?もしなにか悩んだ事があったら、わたしに相談してね?」 先輩はなにか決意したような表情で、言いました。 あんまりに真剣で。 ボクも、真剣になって返します。 「うん・・・そうします。でも、先輩の事じゃ、ちょっとできないかも・・・それは、ゴメンなさい」 自分の、正直な気持ち。 雪乃先輩も、真面目に。 「良いんだよ?無理しなくても・・・・・・でも、何かあったらわたしにも言ってね?お願いだから・・・」 ちょっと切ない顔をして。 ボクも切なくなって、雪乃先輩をぎゅっと抱きしめます。 「わたしも、絶対ハルカには話すから・・・だって、恋人だもん」 傘を投げ捨てて、ボクをぎゅっとする、雪乃先輩。 二人は雨で身体が濡れちゃうのもかまわず、お互いを強くぎゅっと、抱きしめました・・・・・・。 ・・・・・・今考えると、ちょっと恥ずかしいな、やっぱり。 「うわ」 小さく叫ぶと、先輩は慌てて傘を拾います。 「ハルカが風邪引いちゃう・・・」 自分の事じゃなくってボクを心配してくれる・・・先輩、やっぱりやさしい。 思わず、 「ゴメンなさい・・・」 と小さくつぶやくと。 「いいのよ、気にしないで・・・コレもわたしの悪いクセだから」 と、にっこりしながらボクの頭をやさしく撫でます。 そんな先輩を、ボクはまた、ぎゅっとしました。 ・・・ふと、思いだした。 「・・・・・・先輩、そういえばボク、結構コンプレックスを話しましたよね・・・・・・」 先輩は突然のボクの言葉に、きょとんとしています。 「ほら!背が低い事とか、顔が女みたいだとか、身体が貧弱だとか・・・・・・」 「あぁ!」 そう、事あるごとに、言ってました。 今思うと少し情けないんですが。 でも。 「雪乃先輩ってば、それを逆手にとって・・・・・・」 女装させちゃうんです。 まったく、もうッ! でも先輩はそれを分かってて、言います。 「だってハルカ、それが可愛いんだよ?だからこそ、こんなカッコさせちゃうんだな・・・・・・」 う〜ん、よく分かんないけど・・・・・・。 でも、先輩と今こうしていられる事に比べれば、些細些細。 ・・・そんな事言ってたら、ちょっと気になった。 「・・・・・・雪乃先輩、もしボクがこういうふうじゃなくて、それで先輩のことやっぱりスキになっても・・・今みたいに、なれなかったかなぁ・・・・・・」 ・・・・・・心配、だったんです。 雪乃先輩は、かわいいからボクの事、スキになったのかなぁ、じゃあかわいくなかったらスキじゃないのかなぁ・・・・・・って。 でも、先輩はボクの頭をまた撫でながら、言いました。 「もぅ・・・何いってんのかなぁ・・・。うん、ちょっと時間は掛かったかもしれないし、こういう形じゃないかもしれないけど・・・・・・ハルカが今みたいに純粋にわたしの事スキだって思ってくれたなら、やっぱり今みたいに一緒にいると思うよ?」 見ていて安心するような、やさしい笑顔で。 それでボク、すっごくうれしくなって・・・・・・。 「雪乃先輩!」 目をキラキラさせながら、ボクは先輩に抱きついちゃいました。 「もぅ・・・ハルカってば」 ちょっと照れながら、でもうれしそうに、先輩も言います。 こんなボクたちを少しからかうように、雨はしとしと、降り続けました・・・・・・。 ふたりならんで、あいあいがさ。 恋人同士を、後を付いて雨が降る。 しとしと、しとしと。 ボクたちの事、祝福してるみたい。 ですよね、雪乃先輩!! 105. もうすっかり安心してました。 油断してた。 まさかまだ、いたなんて・・・・・・。 昨日先輩が家に来て、夜ふかししちゃいました。 だから今日は眠くって、すっかり寝ぼけちゃって。 「きゃん!きゃん!」 子犬の鳴き声で目覚めた、気がした。 気のせいだろうと思って、気にも留めず朝ご飯を食べて、自分の部屋に着替えに戻ると・・・・・・。 ベッドの上に、子犬。 「きゃん!わうぅ〜ん♪」 妙に上機嫌に・・・・・・。 でも、この子・・・・・・。 「あー・・・キミは・・・・・・シロ!?」 目をこすりました。 気のせいじゃありません。確かにいます。 元気にしっぽを、ぶんぶん。 「・・・・・・シロ?」 恐る恐るたずねると、 「きゃん!きゃん!」 と、答えます・・・・・・。 間違い無い、シロです・・・・・・でも。 だってシロは、きちんと天国に行ったんじゃ・・・・・・? ボクは首をかしげて考えていると、突然シロが。 「ねぇはるかくん!」 と、とってもうれしそうな声で、話しかけるんです・・・・・・!? 「う、うぅ〜ん・・・・・・」 ビックリ!! 思わず、立ち眩みしちゃう・・・・・・。 「あれ?はるかくん、しっかり!」 ベッドの上にちょこんと座るシロに、ボクはめまいがしながらもたずねました。 「ねぇシロ?キミは天国に、行ったんでしょ?」 「うん、いったよ!でも、はるかくんにはおせわになったから、ぼくが守ってあげる!!」 ・・・・・・どう言う事でしょう!? 「シロ、それって・・・・・・」 「だから、ぼくがはるかくんの『しゅごれい』になるんだ!」 動揺するボクに、シロはにっこりと答えました。 だって、いぬですよ!? それも、60年前に死んでしまった、子犬の幽霊・・・・・・。 はぅ、めまいが・・・・・・。 「でも、なんではるかおばあさんじゃないの?」 ちょっと、気になった。 勘違いとかじゃ、無いのかな・・・・・・。 でもシロは、にっこりと答えます。 「はるかくんにはおせわになったから!」 「でもボク、はるかおばあさんじゃ無いよ?分かってる、かな・・・」 「うん!だってはるかくんは、おとこのこじゃない・・・」 う〜ん、話が噛みあわない・・・・・・。 でもとにかく、シロはボクの守護霊になっちゃったみたい!! 「ねぇ、雪乃先輩!」 ボクはビックリしちゃって、先輩にすぐに電話をかけました。 「うにゃ・・・うーん?ハルカぁ?」 雪乃先輩、朝は弱いから・・・起こしちゃったかな・・・。 「今、ボクの部屋にシロが!!」 おかまい無しに、ボクは慌てて叫びます。 「・・・!?ハルカ、ウチにこれる?」 ボクの言葉に一気に目覚めたみたい。 「ハイ!今行きます!!」 ボクは元気に答えました。 「う〜ん・・・どうしたのかしら・・・・・・」 先輩は電話の向こうで、真剣に考え込んでいます・・・。 「こんにちは!」 ボクは挨拶するなり、慌てて雪乃先輩のお部屋へ駆けこみました。 「先輩、シロが・・・」 ・・・・・・ドアを開けると、先輩は着替えの途中でした・・・・・・。 下着姿、見ちゃったよぉ・・・・・・。 「・・・・・・ゴメンなさい」 ボクはおずおずと、ドアを締めます。 でも先輩はあっけらかんと、 「あ、ハルカおはよー」 なんて、ノンキに挨拶。 もう、先輩ってば・・・・・・もう少し、気を付けてよっ! 「着替え終わったよー・・・ハルカ、シロ連れてきた?」 先輩が、ドアを開けました。 ボクはシロを連れて、部屋に入ります。 先輩には、見えてないみたい。 「・・・・・・どうしたの?」 正座するボクに、少し心配そうにたずねます。 ボクは困惑して、言いました。 「・・・なんかね、シロがボクの守護霊になるって・・・・・・」 シロがきゃん、と吠えました。 「えぇ?おばあさんじゃなくって、ハルカの?」 不思議そうに先輩は言いました。 ボクも、わかんない・・・・・・。 「ぼくは、はるかくんをまもるんだよ!」 シロが、言いました。 「あ、また言った。ボクを守るんだって・・・・・・」 「え?そうなの・・・」 呆然と、雪乃先輩はボクを見つめます。 「・・・大丈夫。ハルカは、わたしが守るんだから・・・・・・」 といってボクをぎゅっと抱きしめると、突然ボクの唇に、キスをして・・・・・・。 その様子をからかうように、シロはきゃん、と言いました。 「えぇ・・・ウソぉ!?」 キスしたとたん、雪乃先輩はビックリして飛びあがりました。 「え・・・ねぇ!?今、シロが・・・ホントだ、ここにいる・・・・・・」 ・・・なんででしょう!? ボクとキスしたとたん、雪乃先輩にもシロが見えるようになったみたい・・・・・・。 「あ、ゆきのおねえさん!ぼくははるかくんをまもるんだ!」 シロが明るく言います。 雪乃先輩、ビックリ・・・・・・。 「ウソでしょ?だってあなた、もう成仏したんじゃ・・・・・・」 珍しく動揺している、雪乃先輩。 それもそうですよね・・・こんなの。 ありえない。 でも確かに目の前に、シロはいる・・・・・・。 「ぼくは成仏してないよ!それに天国にいったけれど、はるかくんをまもるためにもどってきたんだ!だから、ごあいさつ!」 目の前の可愛い子犬は、ボクたちに確かに人間の言葉で明るく挨拶してるんです。 ボクたち二人は困惑して、何も言えなくなっちゃった・・・・・・。 そのうちにシロは、いつの間にかいなくなっちゃった。 ボクたちは狐につままれたような顔をして見合わせます。 「・・・一体、どうしたの?」 「・・・ボクにも、わかんない・・・・・・」 あまり深く考えない事にして、ボクたちは今日も街を歩きます。 すると怪しげなセミナーの勧誘。 「もしよろしかったら、心霊能力測定、受けてみませんか?新たな自己能力啓発!今なら無料です!」 キレイなお姉さんが、いかにも怪しげな言葉を並べ立てて言います。 ボクは逃げたくて、先輩の袖を引っ張ったのですが・・・・・・。 「あら、面白そうじゃない、このインチキセミナー」 と、雪乃先輩は余裕の表情で言いました。 「あら?インチキじゃありませんよ?とにかくテストだけでも・・・・・・」 お姉さんは笑顔を少し引きつらせて言います。 雪乃先輩は一層不敵な笑顔で、 「受けるわ?でもわたしそれなりに詳しいから、インチキはすぐに分かりますけど?」 なぁんて・・・・・・。 ボクはイヤだなぁ、と思いながらも先輩に手を引かれて、怪しげなビルに入ります。 「ハイ、じゃあコレ。テスト用紙ですー」 さっきのお姉さんが、明るく言いました。 早速テストを見ると、意味の分からない質問がズラリ。 「・・・コレは?」 雪乃先輩が、たずねます。 「コレは心理テストの一種です。これによりスピリチュアルな深層心理の領域を探ります」 お姉さんが明るく答えますが、よく分かってないみたい・・・・・・。 まずはこのテストを一通り解きます。疲れる・・・・・・。 次に、カード当てテスト。 「じゃあ私の持ってるカードがどれか、当ててくださいねー」 と言って、トランプを山から適当に1枚取りだします。 ボクはあてずっぽうで答えますが、10回やって全部外れ・・・・・・。 お姉さんがボクを哀れむような目で見ます。 ・・・・・・ちょっと、ムカツク。 でも先輩は、結構当たってるんですよね・・・・・・。 ちょっと、不思議。 他にもいろんなテストを受けましたが、あんまりにヘンテコだったし、よく覚えてません。 どれもからっきしでした、ボク。 でも雪乃先輩は、 「結構余裕だったかもね・・・」 と、不敵な笑みでボクに話します。 ・・・・・・でも、なんなんだろ? テスト結果を、あのお姉さんがボクたちに告げます。 「まず、井上遙さんだけど・・・正直、この領域はあまりよく分かってないみたいですね、もう少し私たちのセミナーで勉強する事を勧めます」 ・・・ボクは首を振りました。 そして、雪乃先輩を見て。 「今度は堀江雪乃さんね・・・あなた凄いわ、パーフェクトに近い数字が出てる」 お姉さん、少し驚いてます。 やっぱり先輩、凄いのかなぁ・・・・・・。先輩は全然うれしくなさそうだけど。 「あなたはスピリチュアル領域にも強い適正があります。当セミナーで更に上を目指しましょう!」 ノンキに、言います。 でも先輩は華麗にスルー。 最後にお姉さんは、不思議な事を言いました。 「・・・あなた達、正反対なのね・・・。コレ、スピリチュアルな観点からは相性が最高です!あぁ、どちらかが男の子だったら、ねぇ・・・・・・」 ・・・・・・お姉さんには、ボクが男に見えなかったみたい。 しょげちゃいます。 「・・・遙クン、男の子なんだけど。わたしたち、付きあってるのよ・・・ホントにあなた達、オカルト研究のプロなの?」 雪乃先輩は呆れて言いました。 お姉さんは驚いて、 「まぁ・・・ホント!?じゃあもう大切にしてあげて!?ホントに素敵なカップル・・・全ての精霊もあなた達を祝福するわ・・・」 と、雪乃先輩の指摘を無視して感激した様子でいいます。 感激するお姉さんを無視して、雪乃先輩は 「ハルカ、行きましょっか」 と、ボクの手を引きます。 ボクもイヤだったので、先輩に付いていって。 お姉さんはボクたちが部屋を出た後も、まだなにか言ってます・・・・・・。 「・・・あー、胡散臭かった」 雪乃先輩は、にっこり笑って言いました。 「だって、自分で出したテストの意味も理解して無いんだもの・・・オカルト専門家として失格ね」 呆れ果てて、言います。 ボクも大きく、うなずきました。 でも、先輩ちょっとだけ、うれしそう。 「・・・あれ、うれしそうですね・・・どうしたんですか?」 ボクが気になって、たずねると。 「だって・・・あんなのでも、わたしとハルカの相性最高って言われたのよ?それはやっぱり、うれしくなっちゃうじゃない・・・・・・」 なんて、もうでれでれした様子で、笑って言いました。 ・・・・・・ボクは、女の子と思われたし、ちょっと信用してはいないのですが・・・・・・。 ま、いっか! ボクはやっぱりちょっとうれしくなってきて、雪乃先輩の手を取って歩き出します。 「ねぇ先輩!今日はどこ行きましょっか?」 「そうねぇ・・・図書館でも行きましょっか!」 そしてボクたちはいつものように、二人並んで手を繋いで、歩き始めました。 今日も一日、楽しみだなぁ・・・・・・。 先の怪しげなオフィスビルの一角。 勧誘の女が、嬉々とした様子で電話をかける。 「・・・見つけたわ、凄いの」 「へぇ、どんなのだい」 電話の向こうは、ボイスチェンジャーを通した男らしき声。 女が、仔細報告する。 「シンクロ率にPSIスコア・・・・・・その他も好成績の、異能・超常に親和性の高い女の子・・・逆に、全然検出できなかった、『器』の男の子・・・二人は付き合ってるみたい。凄いわ、上に報告しなきゃ。今データを送るわ♪」 そして、ファックスを操作する。 どうやら男も、確認したらしい。 「・・・ほぅ、面白いじゃないか」 「でしょう?私が見つけたの」 そして女は、急に冷静な口調で、話す。 「・・・・・・例の計画、上手く行きそうね」 男も、うなずいたように。 「そうだな、コレで当面の心配は無くなったわけだ」 ・・・・・・こんな事、雪乃と遙の二人にはまったく関係無いのだが。 106. 今日もトールさんが出演するという番組を、先輩とボクの二人で見ています。 そしてCM。 ・・・・・・奇妙な歌をBGMに、見覚えあるアスキーアートが出てくるCMです。 「みこみこなーす!みこみこなーす!なまむぎなまごめみこみこなーす!!」 ・・・巫女みこナースですか。 「へぇ〜・・・2ちゃんのAAがこうも堂々とCMになっちゃうのねー・・・」 雪乃先輩が感心して見ています。 「ヘンなのぉ」 ボクは思わず、笑っちゃいます。 雪乃先輩はマジメな顔で、 「まぁ・・・ネオ麦茶とかで最悪な評判だった2ちゃんねるも、今じゃずいぶんと市民権を得たものね・・・『電車男』の影響かしら?」 と、冷静な分析。 「へぇー・・・電車さんは偉大ですね」 ボクは、つぶやきました。 すると先輩、大マジメに。 「まぁ、ね・・・でもわたし、電車男キライなのよね。胡散臭いし、それに書籍化・メディア展開も権利関係白黒はっきり付けもしなかった・・・・・・」 ちょっと、不機嫌。 「それに、結局2ちゃんがあんまり評判いいところじゃない事は、変わり無いしね」 まぁ、確かに・・・。 「でもわたし思うのよ・・・。2ちゃんねるはやっぱり面白いところよ?あれ匿名だからこそなのよね・・・・・・いろんな人のいろんな考えが垣間見えて意外と勉強になる」 ・・・ボクにはちょっとわからないけど。 そしてますますムスッとして、雪乃先輩は続けます。 「あれよ、総務省が『ネットの実名化、実名ブログの推進』みたいな事言ったじゃない?でも、アレもバカな話よね・・・・・・ま、こういう形で総務省のもくろみは崩れちゃうと思う・・・匿名キライな人はmixiみたいなの使えばいいんだし」 まぁ、そういうものなのかなぁ・・・・・・。でも、よく分かんない。 「ようするに、2ちゃんねるがこういう形で受け入れられるのはいい事なんじゃない?」 ボクは取りあえず、相槌を打ちます。 でも、雪乃先輩はヘンな顔をして、最後に。 「・・・・・・でも、関係無いサイトに2ちゃんのノリを持ちこむのだけは、勘弁ね」 まぁ、それには同意かも・・・・・・。 ・・・・・・ボク、2ちゃんねるはよく知らないんですけどね。 107. マキトさんって、いつも唐突なんですよね。 雪乃先輩も、そうなんですけど。 「うひゃあ、暑いなぁ・・・・・・」 ボクは今日も駄菓子屋に向かいます。 すると見覚えあるバイクが、びゅんと走り去りました。 ・・・あれ?カタナ・・・・・・? 両手いっぱいに、お菓子を買いました。 ボクは練りあめをくわえながら、雪乃先輩の家へ向かいます。 すると、タバコ屋の店先で、なにやら言いあってる声が。 「えぇ・・・ガラムもう無いんスか!?」 聞き覚えのある声。 よく見ると、タバコ屋の隣に一台のバイクが停まっています。 ボクは駆け寄ってみると、案の定声の主はマキトさんでした。 「アレぇっ!?マキトさん、どうしたんですか?」 ボクは驚いちゃいました。 「お、ハルカじゃん♪なぁハルカ、聞いてくれよ〜」 マキトさんは相変わらずな様子。 情けない声を出しながら、訴えます。 「いつも吸ってるタバコ買おうと思ったらもう無いッてんだよ・・・なあおばちゃん!両切りのガラムホントに無いの?」 「すみませんねぇ・・・もう取り扱い廃止になっちゃって、在庫も切れちゃったんですよ・・・・・・」 申し訳なさそうな、タバコ屋のおばさんの声。 マキトさんも困って、 「参ったなぁ・・・オレさぁ、ガラムじゃないといまいちなんだよなぁ・・・・・・」 と、つぶやきます。 タバコのこと、よく分からないです。そこまでこだわるものなのかなぁ・・・・・・。 「フィルター付なら何種類かあるんですけどね・・・」 おばさんがやさしく言うのですが。 「フィルターはいらないから両切りのガラムがぁぁぁ」 マキトさん、ホントに情けない声で言います。 でも、そこまで・・・・・・。 理解出来ないふうなボクの表情を見て、マキトさんが愚痴ります。 「まったくよー・・・そりゃあガラムきっついけどさぁ、なにも廃止する事ねえじゃんかよ・・・・・・」 ボクは、呆然。 それが腹立たしかったのか、マキトさんはボクに分かるような例えを少し考えて、言いました。 「・・・じゃあハルカ、オマエのお気に入りのお菓子がある日突然無くなっちゃったら・・・・・どうする?オマエ」 ・・・ちょっと考えました。 あ、そういえば。 「・・・ボク、そういう経験、ありますよ?中学の頃、ある日お気に入りのお菓子が発売中止になっちゃって・・・・・・悲しかった」 「だろぉ!?」 マキトさんは妙に嬉々として、言います。 仲間を見つけたみたいに。 「そうそう、悲しかったろ?今のオレの心境と同じさ・・・もう日本にガラムが入ってこないという悲しみを分かち合おうぜぇぇ!?」 なんて、ボクに抱きつくんです・・・・・・。 「うわっ!?」 ボクは振り払っちゃいます。 「なぜだ!?同士よ!」 マキトさんは叫びました。 でも、男の人に抱きつかれても、ちっともうれしくないし・・・・・・。 ・・・・・・それにマキトさん、タバコ臭いんだもん。 「じゃあ仕方ねえ、セブンスターください」 すごすごと、マキトさんは別のタバコを買うことにしたみたい。 珍しく、しょげています。 ・・・それにしても。 帰ってくるにしても、マキトさんやっぱり唐突。 だって、雪乃先輩にも帰るって連絡いれてないみたいなんだもん・・・・・・。 「ねぇ、マキトさん?」 ボクは、ヘルメットをかぶろうとするマキトさんに、たずねます。 「連絡も無しに・・・帰ってくるなんて。雪乃先輩、結構心配してますよ?」 すると、マキトさんはちょっと困った顔しながら、 「あちゃー・・・アイツのことだからオレなんてどうでもいいとばっか・・・」 と、頭をかいて言います。 「・・・そりゃそうですよ。だってマキトさん、行き先も言わないんだもん・・・・・・」 ・・・・・・ボクだって、心配してたんです。 でもそんなボクの様子なんておかまい無しで、マキトさんはボクの頭をわしゃわしゃとして言います。 「わりぃ、でもオマエらにはちょっと言えないんだよな・・・ホントすまねえ」 そして、バイクにまたがります。 「アレ?どこ行くんですか・・・」 とっさに、ボクは聞きます。 するとマキトさんは、また困りがおで。 「・・・まだ用事が済んで無いんだ。ちょっとこっちの様子を覗きに来ただけ・・・じゃあな、ハルカ」 と言って、ボクが聞き返す間もなく走り去ってしまいました。 残されたボクは、ボーゼン。 雪乃先輩の家に着いて。 ボクは、さっきマキトさんに会った事、そしてまたどこかへ言ってしまった事を先輩に話しました。 雪乃先輩、ヘンな顔して。 「まったく・・・マキト兄さんってば・・・・・・」 と、呆れて言います。 「まったくですよね・・・行き先も教えてくれないんですよ?酷いなぁ・・・・・・」 ボクも憤慨して、言います。 「まったく、マキト兄さんいつもこうなんだから・・・・・・」 雪乃先輩、溜息付きながら。 でもその目は、ちょっぴり悲しそう・・・・・・。 なんだかんだいっても、やっぱりマキトさんの事、心配なんだなぁ・・・・・・。 108. 今日は隼人君とお勉強。 今日はしっかり、普通の服装ですからねッ!? 相変わらず注意力散漫な隼人君。 熱心に勉強するボクを尻目に、ペン回しに興じています。 「ねぇ、隼人君・・・それじゃ宿題、終わんないよ?」 あんまりに手が付いてないみたいだったから、思わず注意しちゃった。 「あー・・・わりぃわりぃ」 気が付いたように、隼人君はそういうと、やっとノートに向かいます。 ホントに隼人君、大丈夫なのかなぁ・・・・・・。 隼人君は勉強をはじめて10分も立たないうちに、唐突にボクにたずねます。 「なぁ遙・・・オマエさぁ、女装してるときいつもトイレ、どうしてるの?」 素朴な疑問・・・ってヤツみたい。 でもそれどころじゃないボクは、 「もぅっ!きちんと勉強してよ〜・・・」 と言って、無視しようとしたんですけど・・・・・・。 「いいじゃねーか、教えてくれたって・・・」 なんて、ちょっとさみしそうに隼人君、言うんです。 「・・・・・・ケチ」 なんて、すねられちゃって・・・・・・。 こう言われちゃうと、ボクってば弱いんだよなぁ・・・・・・。 仕方無しに、話しました。 「普段はねぇ、コンビニのトイレとか使ってるんだ。ほら、男女共用だから・・・行きたくなったらまずはコンビニを探すの」 「ほぅほぅ」 妙に興味津々です。 まぁ・・・それもそうなのかなぁ・・・・・・。 隼人君、何故か目を輝かせて。 「で、それで?やっぱ立ってションベンすんの?」 ・・・・・・そんな事、言えるわけ無いじゃないですか。 ボクは困った顔をして。 すると隼人君はとっさに、 「じゃあ別の質問。コンビニが見つからなかったら・・・どうすんの?」 うわ。 やっぱり、聞かれちゃった・・・・・・。 「う〜ん?テキトーに」 ボクははぐらかそうとしますが・・・。 「適当にじゃわかんねえ。なぁ、男と女、どっちの便所使ってんの?」 聞かれたくない質問だぁ・・・・・・。 仕方なく、話しました。 「あのねぇ・・・前に一回、そう言う事があってね?」 ボクは、雪乃先輩と二人で出かけたときの事を、話します。 その日は、先輩が行きたいというから、ちょっと遠くまでお買い物に出かけてました。 その帰り道、ボクは突然、トイレに行きたくなっちゃいました。 「・・・あのね?雪乃先輩・・・・・・」 ボクは恥ずかしかったけど、もうそれどころじゃなくって、青い顔をして思いきって先輩に言いました。 「どうしたの?ハルカ・・・」 少し、心配そうな顔。 ボクは先輩に、こっそりと耳打ちします。 「ボク・・・・・・トイレ行きたくなっちゃった・・・・・・」 もう、恥ずかしかった。 でも、ホントに限界だったんです。 雪乃先輩は辺りを見まわします。 困った事に、周囲にコンビニはありません・・・・・・。 でも、すぐ近くの公園には男女別のトイレがあります。 ・・・・・・でも、スカートだったんです。 「参ったわね・・・でもこのカッコじゃ・・・・・・」 考え込む、雪乃先輩。 ボクはいっそ、このカッコでも男子トイレに駆けこもうと思って、言いました。 「先輩・・・女子トイレには入れません・・・行ってきます」 と言って、男子トイレに行こうとしたのですが、首根っこを先輩に掴まれました。 「ねぇハルカ?そのカッコで男子トイレに行ったら、変態だよ?」 と、にっこり言うんです。 なにか、企んでるような気もするんですけど・・・・・・。 でも、確かにその通り、かも。 「わたしがついていってあげるから」 と、先輩はボクの手を引いて女子トイレへ。 もう、恥ずかしいし・・・・・・。 万が一バレたら、ヤバすぎます!! 「ちょっと待って」 入り口で、先輩はボクに待つように言いました。 「他の人がいないか、見てくるね?」 と、にっこり。 ボクは少しだけ、ほっとしたような気がしました。 すぐに戻ってくると、 「いなかったよ?行くなら今!」 と、ボクの手を引いてトイレへ。 でもいざ女子トイレの扉の前に立つと、緊張しちゃいます・・・・・・。 それにバレちゃったら・・・なんて思うと、やっぱり怖い。 先輩は笑って、 「大丈夫よ!わたしが見張っててあげるから」 と、頼もしい口調で言います。 ・・・でもそれって、先輩に音を聞かれちゃうって、事ですよね・・・・・・。 ちょっとフクザツな気持ちで、トイレに入ります。 恥ずかしくって、ジャージャー水を流しながら、用を足しました。 音を聞かれたくないって言う女の人の気持ちが、とっても良く分かってしまった・・・・・・はぅっ。 そして下着を直して、ふと気が付きました。 いくらこのカッコでも、他の人には見られたくないです・・・・・・。 「ゆ、雪乃せんぱぁい・・・・・・」 ボクは、情けない声で雪乃先輩に救いを求めました。 先輩はすぐに分かってくれて、 「ハルカ、今なら大丈夫よ!」 と、言ってくれました。 ボクは慌ててトイレから出ると、急いで手を洗って、外に出ました。 もう、ドキドキしっぱなし・・・・・・。 イヤな汗を、じっとりとかいてました。 雪乃先輩が後から来て、ハンカチを手渡してくれます。 水で濡らしてくれてました。 「あ、ありがとうございます・・・」 ボクはほてっちゃった顔を、ハンカチで拭きます。 「大丈夫?」 心配そうに、先輩はボクの顔を覗きこみます。 ボクはどぎまぎして、 「恥ずかしかったぁ・・・・・・」 とだけ、言います。 するとその様子を見て、面白かったのか笑いだしちゃうんです・・・先輩ってば。 「もぅっ!何がおかしいんですか!?ボク真剣だったんですよ!?」 ちょっと、憤慨しちゃう。 すると雪乃先輩、ボクの事いきなりぎゅっとして、頭をやさしく撫でます。 「・・・雪乃先輩っ?」 突然の事に、それにさっきまですっごい緊張してたから、少し驚いちゃったけど。 でも、すごく心地よくって・・・・・・。 先輩は甘い声で、言います。 「ハルカ、頑張ったね・・・もう、かわいいんだから」 なんだか繋がってない。 ボクはものすごくヘンな気分になっちゃいます・・・・・・。 そんな事一切を、隼人君に話しました。 隼人君、すっごいヘンな顔してる。 そりゃ、そうですよね・・・・・・。 そして、口を開きます。 「・・・・・・オマエも、大変なんだなぁ・・・・・・」 なんて、ボクの頭を突然くしゃくしゃして。 「わわッ!?何するんだよぅ・・・」 ボクは驚いちゃって。 ボクの驚き様に、隼人君は手を離して。 「わりッ、だって可愛かったからよー・・・・・・」 なぁんて、またヘンな事! 「もう・・・隼人君、そういうの止めてよッ!!」 ホンット、いつも隼人君てば・・・ヘンなんだから、まったく! 109. 突然マスターが、コーヒーを飲んでいる雪乃先輩とボク、それに如月先輩に言いました。 「なぁ雪乃チャン、遙チャン、それに明日香チャン!明日空いてねえか?」 久しぶりですけど、ちょっとビックリ。 「空いてるわよ?」 「ボクも、空いてますけど・・・」 でも、如月先輩まで・・・珍しい。 「明日香チャンは?」 マスターがニヤリとしながら、たずねます。 「え・・・私も明日は、ヒマですけど・・・・・・」 ちょっと困ったように、如月先輩は答えます。 するとマスター、満面の笑みで、 「じゃあ明日、ちょっと隣街に店ぇ出してみっから、良かったら手伝ってくんねぇか!?」 ボクの肩を叩いて、言います。 ボクは、ただうなずきました。 先輩も、 「久しぶりねー・・・給料はきちんと払ってくれるんでしょうね?」 と、にやにやしながら。 マスターは得意げに、 「あったりまえよぉ!!一人3万出してやらぁ!!」 ・・・うわ、すっごい太っ腹。 だって、10時間働いたとしても、時給3000円ですよ!? さすがに如月先輩も、それには心動かされたようで。 「ホントですか!?じゃあ、私もやってみようかしら・・・」 と、笑顔で言います。 マスターは大笑いで、 「よぉ〜し!じゃあ明日はよろしく頼むぜぇ!?」 なんて、豪快に。 ・・・・・・ちょっと、ウラがありそうで、心配なんですけどね・・・・・・。 翌日。 「じゃあみんな、よろしく頼むぜ!?」 制服姿になったボクたち3人は、元気良く 「ハイ!!」 と、答えました。 それにしても、やっぱりボクもスカートなんですね・・・・・・男なのにィ。 ちょっと不満そうにスカートをひらひらしていると、雪乃先輩が言いました。 「あらハルカ、やっぱり似合ってるじゃない♪」 ・・・その百万ドルの笑顔でさえも、今のボクには恨めしい・・・・・・。 はぅっ。 がっくりしながらふと隣を見ると、ボクと同じようにスカートをもてあそんでいる如月先輩。 如月先輩はうれしそうに、 「うんうん、かわいい制服じゃない・・・そうだ!仕事ってウエイトレスみたいなのかしら?」 なんて、明るい笑顔で。 雪乃先輩も、やっぱり笑顔で、 「そうね・・・注文とって運んでもらうから、似たようなもんね。明日香、ファミレスとかでバイトした事あるの?」 と、たずねました。 すると、如月先輩は。 「そぉねー・・・アンミラとか?」 ・・・・・・アレですか。メイドさんでしたか・・・・・・。 まずはテーブルを用意したり、調理器具のセッティングをやったり。 結構忙しくて、それに体力がいります・・・荷物は重いし、こんな暑い日だし。 もう開店前から、ボクはへとへとです。 そんなボクに、雪乃先輩はニヤニヤしながら、 「ハルカ、体力無いなぁー」 と、余裕の表情で言います。 だって先輩、体力ありすぎ・・・・・・。そりゃあボクだって、お世辞にも力持ちなんて言えませんけど・・・。 そしてようやく開店。疲れた・・・・・・。 開店してからも、人は結構来ます。いつもの学校の前より、お客さんは多いかも・・・・・・。 「おぉ、こりゃあいけるかもしんねーな!!」 マスター、大喜びです。 女の子三人組のお客さんが、なにやらボクたちを見ています。 「へぇ〜、かわいい制服〜」 「なんかレベル高いわねー・・・」 なぁんてきゃいきゃい。 ボクはそれどころじゃなくって、クレープを焼くマスターの手伝いに追われてるんですけど・・・・・・。 ・・・雪乃先輩が、突然如月先輩とボクの手をとって。 「あ、あぁ雪乃チャン!?まぁたか・・・」 マスター、少し呆れてます。 「さて、この3人のうち一人は、実は男の子です!さぁ、誰でしょう?」 ドキィィッ!? もう、雪乃先輩ってば、なにやってんだろうなぁ・・・・・・。 でも雪乃先輩も如月先輩も、ニヤニヤしてるんです・・・・・・。 ボクもなんとなく、ぎこちなく作り笑い。 もう、心の中は、それどころじゃ無いんですけど・・・・・・。 そして突然の問題をふっかけられた女の子三人組は、ビックリしてます・・・・・・。 「えぇ!?うそぉ・・・」 「いるわけ無いじゃない、だってみんなどう見たって・・・・・・」 「もしこの中の誰かが本当に男だったら・・・私自信無くすわ・・・・・・」 ・・・・・・えっと。 いつもはもっと男らしくなりたいとか思ってるんですけど、こう言うときはホントにバレてほしくない一心で。 祈る様な、気分でした。 結局3人とも、お手上げ。 「時間切れですー。あ、今クレープ出来ましたからー」 なんて、ノンキに雪乃先輩はクレープを手渡しながら言います。 三人とも、狐につままれたような顔してます。 販売車の中に戻ると、雪乃先輩が笑って言います。 「あー、ハルカ・・・やっぱバレないねぇー・・・・・・」 ・・・そりゃあ先輩は楽しいかもしんないけど、ボクは結構ヒヤヒヤしてるんですからね!? それに、ただでさえ女の子のカッコなんて恥ずかしいのに、こんなに短いスカート・・・ッッッ!! さすがにマスターも、呆れがおです。 それからも暑い中、ボクたちはクレープ販売にいそしみます。 「じゃあハルカ、交代しよっか」 販売車の中のボクと、注文を受ける雪乃先輩が交代。 すると、明らかに酔っ払っているおじさんが来ます。 ボクたち全員、少し身構えます。 ・・・・・・よりにもよって、ボクが注文を取る事に。 おじさん、ふてぶてしくドカンと座り込んでます。 「あの・・・・・・御注文は・・・・・・」 ボクは恐る恐るたずねます。 おじさんはうつろな目でボクをじぃ・・・っと見ています。 その様子を、三人はじっと見守ります。 おじさんは突然、ボクのスカートをめくりました! とっさに前を押さえたのですが・・・お尻がぁぁぁぁぁぁ・・・ッ。 「ひゃうん!?」 情けない声を上げながら、飛びあがっちゃいます。 ボクは恥ずかしいのと怖いので、しゃがみこんで泣き出しそうになってしまいました・・・・・・。 「お嬢ちゃん、かわいいじゃねえかぁ!?」 酒臭い息を吐きながら、おじさんはニヤニヤしながら言います。 どうしよう、と思っていると・・・・・・。 「ちょっとお客様ぁ!?そういう事は・・・・・・」 引きつった笑顔で、いつの間にか雪乃先輩はおじさんの後ろに回りこんで、今にも殴りかかりそうな勢いでじっと堪えています。 でも、その様子をマスターが制止します。 「ま、マスター・・・」 「ここは俺にまかせとけって・・・・・・」 そしてマスターはおじさんに、言いました。 「お客さま。ここはそういうお店じゃないんだなぁ・・・止めてもらえませんかねぇ?」 ・・・・・・ものすごい、怖い顔で、言います。 さすがの酔っ払いも、怖くなって、 「ひ・・・すんませんでした!」 なんて言って、飛んで逃げます・・・。 マスター、ちょっと怖かったです・・・・・・。 「遙チャン!?大丈夫か!?」 ボクの元に、三人が駆け寄ります。 情けない事に、ボクはまた、泣きだしちゃいました・・・・・・。 雪乃先輩は、ボクの頭を撫でてくれます。 「よしよし・・・怖かったね・・・もう大丈夫だから・・・・・・」 小さな子供をなだめるように。 ・・・・・・恥ずかしいですけど。 マスターはバツが悪そうに言います。 「遙チャン、悪かったなぁ・・・・・・今日はもう、店締めるか。帰ろう?」 ・・・気が付けば、もう夕暮れ。 「後片付けは俺たちでやるから。遙チャン、休んどけ?」 と、やさしく言ってくれますが。 ・・・・・・いつまでも泣いてちゃどうしようもないもん。 ボクはなんとか涙を拭いて、立ちあがります。 「・・・ハルカ?」 雪乃先輩、心配そうに言ってくれます。 でも、しっかりしなきゃ。 「ボクも、片付け手伝います!」 雪乃先輩は心配そうな顔をしましたが、如月先輩が、 「雪乃ぉ・・・遙君やるって言ってるんだから、いいじゃない?」 と、笑顔で諭すように言いました。 ボクも、心配させないようにと、にっこり笑顔で。 「もう、大丈夫ですから!さ、片付け片付け・・・」 ・・・もっとしっかりしなきゃ、ね。 仕事が終わって、マスターのお店で一休み。 「しっかし・・・まぁさか遙チャンにセクハラしてくるとは、なぁ・・・あの親父」 マスター、憤慨しています。 どう言ったらいいのか分からないボクを横目に、雪乃先輩も同調します。 「ホンット!人の彼氏にあんな事しておいて・・・今度あんな事になったら、ただじゃ済まさないわ・・・」 ・・・雪乃先輩、怖いです・・・・・・。 ボクの事、大切に思ってくれてるからなんだけど・・・・・・。 如月先輩は少し呆れちゃってます。 「まったく・・・雪乃?少し熱くなりすぎじゃない?」 と、たしなめるように。 雪乃先輩は少し反省した様子で、 「ゴメンゴメン・・・どうしてもハルカの事になると、ね」 と、ちょっとバツが悪そうに。 ・・・・・・ボクは、さっきの事を思いだしちゃって、少しだけヤな気分になってた。 すると、みんなそれを察してくれたのか、 「もう、大丈夫だから・・・」 と、まず雪乃先輩がボクの頭を撫でながら言ってくれます。 如月先輩も、 「そーそー。帰りは私たちが付いてってあげるから♪」 と、やさしい眼差しで。 その様子を見たマスター、 「ガハハ!普通逆だよなぁ・・・でもそれが遙チャンらしいって言えばらしいんだけどな!ハッハッハッハ!!」 ・・・・・・う〜ん。 「大丈夫ですよ、一人で帰れます」 ボクは別れ際に、そう言ったのですが・・・。 「だって、わたしが心配なんだもん・・・」 と、ちょっと泣きそうな目で言う雪乃先輩・・・。 そう言われると、ボクの方が悲しくなっちゃいます。 そして如月先輩は、明るく。 「まぁまぁ!たまにはみんな一緒に帰るのも良いんじゃない?」 ・・・そう考えると、ちょっと良いかも・・・って、思いました。 「うんうん、それが良いな!じゃあみんな、気を付けて帰るんだぜ!」 マスターが玄関先で手を振ります。 ボクたちも手を振って、家路に付きます。 「それにしてもホント、遙君災難だったわね・・・・・・」 如月先輩が、慰めてくれます。 雪乃先輩なんて、 「まったく・・・心配、だったんだから・・・・・・」 なんて、泣きそうな顔しちゃうんです、また。 だからボクは、わらって。 「もう、大丈夫ですから!今度ああ言う事になったら、自分で突き飛ばしちゃいますから!」 ・・・出来るとは、思えませんけど。 でも、気構えが大事! すると、その様子を見て安心したように、雪乃先輩はボクをぎゅっとして。 如月先輩、またかぁ・・・って顔で、ボクたちを見てます。 「ハルカ・・・うん、その意気」 なんて、言ってくれたから・・・・・・。 もう、負けないぞッ!! -------------------------------------作者コメントwwwww------------------------------------- 100. うはwwwwwwwなんかついに100話到達しちゃってるしwwwwwwwwwwwwww 100話記念ってワケでもないけど、初心に帰って(?)いつもの雪乃と遙の様子をちょっと描いてみました。いっつもコイツら、こんな感じ!!まったく、もうッ!! 思えば長かったような、あっという間だったような・・・・・・。 最初はホントに一発ネタみたいなつもりで、スレに晒してみたらけっこう暖かい言葉をいただいて、「よし、いっちょ書いてみっか!!」なんて軽い気持ちで始めたこの女装ショタ小説なる企画。 気が付けば、遙にも雪乃にもすっかりたくさんの友達が出来たし、なんかいっつも遙は雪乃に女装されられっぱなしだし、振りまわされっぱなしだし、もうね、書いてる本人がこんな事になるなんてよもや思いもしませんで。 なにしろ小説だし、ましてやなんかやたらと業の深い企画だし、おまけに女装ショタと言っておきながら内容はおねーさん×ショタと言う、本気でショタスキーな人たちからは非難を受けそうな企画だったけど、その割りにはずいぶんと暖かく受け入れてもらえた気がします。 本当に、見てもらった方々、キモイとかウザイとか思ったであろうにもかかわらずスルーしてくださった方々、みんなのおかげで趣味全開でここまで突っ走ってこられたのかなぁと思うと、感謝してもしきれないくらいですよ、ホント・・・・・・。 それに、遙と雪乃、そしてよくわかんないけど先ボクの絵を描いてくださった方までいて、ホント感謝、感謝ですよ。 何らかの形で恩返ししたいなぁ、ってくらいです。いや、時間無いしなかなかそう言うわけにも・・・社会人ってこう言うとき辛いなぁwwwwでも、HTML化とか、番外編みたく漫画とか、そういうのもやっていきたいなと。 いいたい事まだまだいっぱいだけど、この辺にしておいて。 本当にみんな、ありがとうございます!! でも100話いったからって、困った事にまだまだ描きたい事もあるんで「先輩とボク」当分続いてしまいそうです。 「理想のショタキャラを書いてやるッッッ!!!」なんて発想で始まったこの話、その線を維持しながらもいろいろ試行錯誤悪戦苦闘しながら、これからも遊んでいきたいなぁなんて思っとります。 これからも、生暖かい目で見守ってくれたら、幸いです。 最初は30話くらい続けばいいとこかなぁと思ってたけど、もうここまで来たからにはなんとしてもやれるところまで突っ走っちまうぞ!! 例のムチャクチャな投票も、引き続きよろしくッ!! それから新都社の他の作品も結構ネタにしてたりして、その作者方には特にお礼とお詫びを申し上げます。更に更にコスプレさせてしまったり、コレからもメーワク掛けちゃうかもしれないけど、よろしくお願いします! 思えば今まで趣味で小説とか絵とかかいてはいたけれど、ちっとも完成させた事無かったんだよね、俺。でも、この企画がこんなに続いたのは、まぁ趣味ってのもあるけど、それ以上に有形無形のみなさんの協力あってこそだと、思うんだよね。 気が付けばすっげえ長文だし!まぁいいか。 最後に、新都社と編集の人たち、作者の人たち、読者の人たち、みんなみんなに感謝を込めて。 あー、多分ネタ切れまで続いちゃう気がするんで、取りあえず気にすんな!! あと、なにか書いてみたいけど・・・と思ってる人たち、クオリティとか気にせず思いのまま書いちまえ!!正直言って、俺最初新都社スレにNURUPOって漫画うpしたとき、読みきりかなぁ〜なんて思ってたもんだから、よもや小説書き始めて100話行くなんて思いもしなかったし。 でも自分の好きな物思いっきり書くのって、すっげえ楽しい。テラオモシロスwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww まぁ長くなりすぎたけど、コレからもみなさま、読む読まないにかかわらずだけど、お付き合いのほどよろしくお願いッ!! 2005年8月4日 ぬるぽっくす ・・・あぁ、後はちょっとしたキモイ独り言。 雪乃と遙には、もっといろいろ暴れてもらわないとな!!うはwwwwwwwwwwヤバスwwwwwwwwwwwwwwwwwwww まぁ、なにしろコイツらのおかげもあるからなぁ、ここまで続いたのは。感謝と言うとヘンだしキモイけど。 101. まぁアレですよ、ハルカの夢の話。 ・・・なんですが、登場した謎の生き物、VPRに投稿されたアレです、「先輩とボク」と描かれた謎の生き物。 でも見れば見るほど面白いなぁ、アレwwwwクオリティタカスwwwww俺も妙に気に入って、実際に先ボクに登場させて見ますた。描いてくれた人、ありがとう。マジで。 しかしハルカと雪乃で解釈が違ってるのは、まぁアレ見て抱いた印象がかなり人によって違いそうだったんで。俺には妙な愛嬌があって見える。 最後の雪乃の「いろりの衣装」って言っても、多分エスプレイドかおとぎ奉りを知らないと分からないよな。ましてやなぜ、あの「妖怪大戦争」公開記念なのかって、分からない気がしたのでこっそり補足。 おとぎ奉り作者の井上淳哉氏が、妖怪大戦争の妖怪デザインに参加してるんですよ。ジュンヤーといえば、かの弾幕シューティングの名作(ってか、アレが出て世のシューティングは弾幕一辺倒になっちまったってくらいの、超名作)「怒首領蜂(どどんぱち)」の製作に携わったりしてた事で有名な。 いろりっていうのは、98年にケイブから出た弾幕シューティング、「エスプレイド」及び前述の「おとぎ奉り」に登場した10歳(だったっけ?そんくらい)の女の子。エスプレイドでは美作(みまさか・・・漢字コレであってたっけ?)いろり、おとぎ奉りでは美河いろりという名前で登場。エスプでは超能力者、おとぎ奉りでは妖怪の宿る「神器」使い。どちらの作品でも、母親を犠牲にして生まれたという悲しい過去を持っています。そして京都弁、「ほなー、いきますぅ〜」 ・・・一般的には弾幕シュー、東方のがぐっと知名度高そうで、イヤだなぁ・・・・・・。 102. 新キャラですよ、女装美少年(ショタではなさそう・・・)でアイドルですよ。 なんか、ハルカ以外の男キャラみんな同じような性格になってそうだなぁ・・・。 二学期からは彼もどうやらハルカたちの学校に通うんだってwwwwww書く俺も楽しみだwwwwwwwwwっうぇうぇwwwwwwwww どうでもいいけど、女装美少年と女装ショタって微妙にニュアンスが違うよね。違わない?そうですかwwwwww そして、なんか魔女とかなんとか話にちらり出てきてるけど違和感あるかなぁ・・・。実はこの流れは当初から予定していたんですけど。でも当のハルカたちにはあまり関係無くまったりと話は進んじゃうけど。 103. センコロ新バージョン記念企画なので旋光の輪舞知らない人には分からない話になってしまった・・・。 まぁセンコロはロリもショタもBLも巨乳もカバーしてるというある意味凄い作品なんでキャラ萌えな人もSTG好きな人も格ゲー好きな人もチェックして損は無いと思うんだけどね。特にツィーラン。 ・・・・・・そもそもショタ萌えに目覚めたのもツィーランのせい・・・もといおかげですからね・・・で、空想女装少年コレクションというエロゲーの女装美少年特集本やらショタ漫画やら買ってしまった俺はどうなるんだ。 ちなみに、旋光の輪舞って通称が複数あったりして。センコロ、のろんど、旋光、輪舞orロンド(発音は「ド」にアクセント、らしい)全部旋光の輪舞の通称。のろんどはどちらかというと801系かも・・・ってか801板で見るな。って事は雪乃先輩腐女子・・・では無いんですけどね。 104. いつかも書いた、雨の話。 まぁいつも結局堂々めぐりの話かも、先ボクって。それがまったりなのかしらー。 105. よくわかんないけど、シロがまた出てくる始末。 色々謎を持って来てはいるんですが、結局雪乃と遙には関係無い話でして。 106. しっかしすげえ世の中になったよね、エロゲのテーマソングと2chAAが一緒になってCMとして割りと人目に付く時間に流れちゃうなんて。 もっとバカ話になるはずだったんだけどなぁ・・・俺こういう話は特にへたくそだわ。 107. マキトまだ帰らないし。コイツやっぱ最悪だわwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww それから両切りのガラム廃止になっちゃったのよね・・・俺クレテック系のタバコは両切りのガラムが初めてだったんで。って、新都社にはタバコ飲みあまりいないみたいだからわからんか。 108. 今明かされる遙のトイレ事情wwwwwwwwこんなバカなのはどうでしょう? てか実のところあまり良く分からないので結構適当になっちゃった。困るなぁ・・・・・・。 109. 自分で書いてても良く分かんなくなっちゃった。まぁ、ハルカがセクハラされるって言うね。てか・・・。 う〜ん、もっと面白おかしい話とか書けるようになりたいわ。まったくぅ。