
「先輩とボク」110話に来てしまってますわぁ。
なんとかして夏っぽい話を描かなきゃなぁとか、新学期にはマキトが帰る予定でトールが転校予定とかいくつか変化がありそうな予感でして。
でもなかなか書く時間取れなさそうなんですけどねorz
まぁ、まったり行きます。まとまった時間が取れるまではね。
なお、この110話は夏休みの最終週と言う事で、チャプターを設けてあります。まったりと、遙たちの夏休みを書いてみたくって。
110.
長いようだった夏休みも、あっという間に最後の一週間です・・・。
なんだか、ちょっぴり切ない。
思えば、本当に色々な事がありました。
良く、隼人君と二人で図書館で勉強したのですが、隼人君は寝てばかりいて・・・宿題、終わったのかなぁ?
色々なところにも出かけました。プールや海に泳ぎに行ったり、山登りをしたり。そうそう、実は雪乃先輩と二人だけで美術館なんて行ってきたんですよ?でもボクにはちっとも分からなかった・・・。
・・・プールと言えば、また六条先輩が雪乃先輩に遊泳で決闘を申し込んじゃったり・・・まったく、困っちゃう。でも結局、雪乃先輩が圧勝しちゃったんですけどね。でも六条先輩、良く頑張りますね・・・・・・。
マスターのお店にも、よくみんなで来てました。今オープンカーを修理中で、「遙チャン、直ったら乗せてやるからな!」と言ってくれたのですが・・・マスターの事だし、いつになるやら^^;
そういえば!突然どこかに行ってしまったマキトさん、まだ帰ってきません。1週間くらいって言ってたのに・・・。雪乃先輩は、「あんなヤツ、ほっとけば勝手に戻ってくるから・・・」と冷たいのですが、やっぱり心配・・・。
そのほかにも、書ききれないくらい色々な事があって・・・・・・。
そして、いつもボクの隣には、雪乃先輩がいて。
けれど、夏休みも終わりに近い20日ごろの事でした。
いつものように雪乃先輩のウチでみんなでわいわいと遊んで、そして帰った後、先輩から突然、電話が。
ボクはとっさに出ます。
ちょっと、ヤな予感がした・・・。
「ハルカ、ごめんね・・・明日から1週間、イタリアに旅行に行く事になっちゃった」
電話の向こうの先輩は、とっても申し訳なさそうでした。
ボクはあんまりに突然な事で、ボーゼンとしちゃって・・・。
「・・・え?イタリアですか?」
「うん・・・父さんの会社のお偉いさんが案内して欲しいって・・・決まったのさっきよ?チケットも用意してあるって言うし、呆れちゃうわね・・・」
・・・旅行と言うのに、ちっとも楽しくなさそう。
「・・・先輩、うれしくなさそうですね?」
思わず、たずねました。
先輩が、答えます。
「だって・・・イタリアなんて何回も行ってるしねー・・・それに会社の人の案内よ?楽しめるわけ無いじゃない・・・その割には父さん、『ドゥカティの工場見てくるぞーっ』なんてわくわくしてるけど」
「・・・そうなんですか・・・・・・」
気が付けば、さみしさが急にこみあげてきて。
「・・・・・・一週間も、なの・・・?」
喉がつまったようになっちゃって。
涙が、こぼれてきちゃう・・・。
「・・・・・・ハルカ、」
先輩の声も、少し弱弱しく、悲しげで。
そして、本当に悲しそうな声で、言いました。
「わたしもね・・・ハルカと1週間も会えないの、イヤなのよ・・・・・・」
・・・・・・電話の向こうの雪乃先輩は、泣いていたかは分からないけれど。
でも、涙声で、ボクに言いました。
「・・・ハルカ、泣かないでよ・・・わたしまでさみしくなっちゃうじゃない・・・・・・」
・・・・・・その後は、ボクはもう収拾付かなくなっちゃって、先輩も黙りこんじゃうし・・・。
二人の間には、ボクのすすり泣きだけが、こだましてました。
・・・たった一週間、旅行してくるだけなのに、ねぇ。
あんまりの自分の情けなさに、呆れた。
1.
雪乃先輩は、あの電話の後、本当にすぐに出発したみたいです。
電話を切る間際、先輩は穏やかな声で言ったんです。
「行って来ます、ハルカ・・・すぐに、戻ってくるからね?」
あの言葉で、少しだけ冷静になれた。
・・・けれど、布団に入っても、ちっともねむれない。
雪乃先輩の事ばかり、考えてた。
次の日。
寝るのが遅かったのに、すっかり早起きしちゃって、でも何もする気が起きませんでした。
眠くも無いのに布団に包まって、ずっとぼんやりしていて・・・。
時々、お母さんがボクを呼びに来たのですが、寝たフリしてました。
隼人君から、あそぼーぜってメールが入ってきても、知らんぷりしちゃって。
それに、なぜだか涙が止まらなくなってしまうんです。
コレじゃいけないと思って、宿題を解いてみたり、詩を書いてみたりしてみても、すぐに雪乃先輩の笑顔が浮かんできちゃって。
それで、先輩が恋しくなっちゃって・・・・・・。
・・・自分でも、ちょっとダメかも、って思います。
「遙〜?もう夕飯出来るわよ?」
心配そうなお母さんの声。
ボクは重い身体を起こして、なんとか食事に行きます。
お父さんとお母さんと、ボクの3人で一家団欒のはずなのに・・・。
食欲が、全然無い。
早々と、箸を置いてしまいます。
「遙、もう食べないのか?」
お父さんが、心配そうに聞きます。
ボクは黙って、うなずきました。
お母さんも、心配そうな顔で。
「・・・遙、ゆっくり休んでなさい。夏休みだからってはしゃぎすぎたんじゃないかしら?」
と、ボクの頭を撫でながら言います。
・・・ボクは目を反らして、
「違うよッ・・・」
とだけ言って、足早に自分の部屋に戻っちゃいました。
・・・・・・お母さん、お父さん、ごめんなさい。
・・・戻っても、やっぱりさっきとおんなじ。
胸に、ぽっかりと大きな穴が空いたよう。
ただぼんやりと、毛布にくるまって。
・・・・・・でも、ふと星空を、眺めようと思った。
ベランダに出て、夏の湿気を含んだ熱い風を感じながら、ボクは空を見上げましたが・・・。
あいにくの曇り空で、星が見えなくて。
なんだか、今のボクの心の中そのもの、って感じ。
結局憂鬱なまま、またボクは布団虫。
・・・・・・あまりに先輩の事が恋しくなって。
先輩からもらった、女子の制服を着てしまいました・・・・・・。
何考えてるんだろう、ボク・・・。
ちょっと自己嫌悪に陥りながらも、鏡に写った自分の姿を見ました。
・・・もう、慣れてきちゃった。
このカッコをするとき、雪乃先輩は本当に喜んでくれるんです・・・どうしてかは、よく分からないけど。
「ハルカ、似合ってるよ?」って、笑顔で言う雪乃先輩を想像して・・・・・・。
それから、自分で自分の頭を撫でてみたり・・・雪乃先輩が、いつもそうするように。
少しだけ、気持ちは落ちついたのですが・・・冷静になって考えてみると、コレってどう考えても変態ですよね・・・・・・。
なんだかまた、落ちこんできちゃう。
・・・でも、気持ちがどうにも収まらなくて。
ボクは便箋に、思わず手紙を書き始めてました。
雪乃先輩へ、想いの丈を込めて・・・。
・・・別に、先輩に出そうって言うわけじゃ、なかったんです。
でも、こうやって今の自分の気持ちを綴っておかないと、いけないような気がしてしまって・・・・・・。
どうにも収まりつかない気分のまま、綴った便箋10枚。
誰にも見られないように封筒にいれて糊付けして、机の奥にこっそりしまった。
気が付けば、午前2時。
今日もボク、眠れそうに無い・・・・・・。
次の日も、同じ調子。
隼人君から、心配するメールが届きました。
ボクは、「大丈夫だよ」とだけ、返しました・・・。
・・・・・・なにもする気力が起きない。
・・・切ないよ・・・・・・。
ふと、ぼんやりとベランダに出て、外を眺めます。
・・・いつもだったら、雪乃先輩が隣にいるのになぁ、なんて考えながら。
・・・・・・すると、下からボクに手を振る、白いワンピースの雪乃先輩が。
夏のお嬢さんって感じ。キレイ・・・・・・。
でも、いるはずは無いんだけど・・・だって、先輩は今、イタリアに・・・・・・。
暑さと、さみしさで、幻見ちゃってるのかなぁ・・・と思うと。
「ハルカー!!帰ってきちゃった・・・・・・」
ちょっとだけきまりの悪そうな表情で、叫びました。
ボクは思わず駆けだして。パジャマのままなのも、気にしないで。
「雪乃先輩!?」
ボクはビックリしちゃって、うれしくって、顔を真っ赤にしながら抱きついちゃいました・・・。
「ハルカ・・・・・・」
先輩も、ボクをぎゅっと抱きしめます。
力いっぱい、少し痛いくらい。
そして、ボクの頭をやさしく撫でて。いつも、そうするように。
すごく、うれしかった。
・・・・・・でも、ちょっと恥ずかしくって。
「先輩・・・中に、入りませんか?」
ちょっと荒れてるボクの部屋。
「めずらしいわね・・・ハルカがこんなに散らかしてるなんて」
雪乃先輩が、ちょっと呆れたように言いました。
「だって・・・何もする気に、なれなかったんですよぅ・・・」
ボクはちょっとだけいじけて、言いました。
先輩は笑って、
「ゴメンゴメン・・・寂しい思い、させちゃったかな・・・あ」
先輩がふと目を止めたのは、出しっぱなしになった女子の制服でした。
「・・・ハルカ、コレ・・・着たの?」
にやにやしながら、聞きます。
ボクはうろたえちゃった。だって、なんか誤解されちゃってそうだし・・・・・・。
「ち、違うの・・・さみしくって、もうホンットに、どうにもならなかったんです・・・・・・」
必死に、弁解。
その様子がおかしかったのかなぁ・・・雪乃先輩はにっこり笑って。
「あー、かわいいなぁもう・・・そっか、そんなにさみしかったのね・・・・・・」
と、またボクをぎゅっとして言います。
久しぶりの感触に、ドキドキしてくる・・・・・・。
「・・・コレ着ながら、わたしのこと考えてたの?」
ちょっと不思議そうな顔で、雪乃先輩はたずねます。
・・・ボクは、流石に答えられませんでした。
・・・・・・だって、「そうだ」って言ったら、変態じゃないですか!?そんなこと、言えるわけ無い・・・・・・。
・・・黙りこくっていると、先輩は、
「ヘンなハルカぁ・・・」
とだけ、言いました。
そして、小さく咳払いの仕草をして。
雪乃先輩の口から飛びだしたのは、あんまりにも突拍子な言葉。
「ハルカ・・・突然だけど、しばらくわたしの家に泊まってくれない?今、わたしだけだから・・・・・・」
・・・・・・ビックリした。
心臓が、口から飛び出るかと思ったほど。
身体が熱くなっちゃって、もうどうしたらいいか、分かんなくなってきちゃう・・・・・・。
意識が遠のくくらい。
もう、どうしよう・・・・・・。
「あ、顔真っ赤・・・」
あんな事、雪乃先輩は、平然と言っちゃうんです。
そんなこと言われたら、誰だってドキドキしちゃうに決まってるのに・・・・・・。
その無神経さが、怖かったりします・・・。
でも、雪乃先輩は、あんまり無防備に、ストレートに。
「・・・ダメ、かな・・・やっぱり・・・でも、どうしても不安になっちゃうのよね・・・・・・一人だと」
そういう先輩、でも余裕の表情で。・・・そりゃあ、10人以上の不良を一瞬にして打ち倒すほどの豪傑だもん・・・。
それに、先輩と二人っきりだなんて・・・・・・。
「先輩!一つ屋根の下なんて・・・ボクどうにかなっちゃうよ・・・・・・」
やっとこさ、大声で訴えて。
汗が、だらだらと流れる。手足は冷たくなってるのに・・・・・・。
でも、そんなボクを、雪乃先輩はぎゅっとする。
とっても、やさしく。
「・・・それは、大丈夫だから・・・多分」
・・・先輩に言われると、なんでだろう?妙に納得するんです。
ボクは顔を真っ赤にしながら、黙ってうなずきました。
「じゃあ決まりね☆わたしのウチに行きましょう?」
と言って、雪乃先輩は勝手にボクのタンスを開けて、洋服を持っていたバッグに放りこみ始めました・・・。
「ちょっとぉ・・・先輩、何してるんですか・・・?」
「仕度」
平然と答えて、またタンスを漁ります。
「ねぇハルカ、下着は?必要でしょ・・・」
「ウワァァァァン!?先輩のバカぁ・・・・・・」
・・・恥ずかしいですよぅ。
でも、そんなボクのささやかな反抗に、雪乃先輩、こう答えるんです。
「あ・・・女の子の服ならいくらでもわたしの部屋にあるし、下着はわたしのを使えば良いか・・・・・・」
・・・・・・!!?
「ちょっと待ってくださいよ先輩いったいあなたは何を考えてくぁwせdrftgyふじこlp;」
「あ、ハルカうろたえ過ぎ・・・可愛いなぁ、まったく」
・・・ホントに、雪乃先輩ってば何考えてるんだろう・・・・・・。
・・・・・・でもボクは、そんな雪乃先輩が、大好きなんですけどね・・・・・・。
「用意できた?」
結局、下着は自分で詰めこみました・・・あの場所だけは、見られてはいけない・・・特に雪乃先輩には。
だって、男の子なら誰だって・・・ごにょごにょ。ボク、自分の部屋に鍵かけて、さらに下着の入っているとこを二重底にして隠してるんです・・・。
って、なに言ってるんだボクは!?
バレないように細心の注意をはらって、雪乃先輩から先に、部屋を後にします。
でも、なぜか先輩は妙にニヤニヤしてるんですけど・・・ちょっと、怖いなぁ・・・・・・。
「あら、雪乃さん」
お母さんが、雪乃先輩に挨拶します。
「いつもウチの遙がお世話になってます・・・」
「いえ、こちらこそもう、遙クンにはメーワクかけっぱなしで・・・」
雪乃先輩も、お辞儀。
・・・お母さんと、ボクの好きな人が話してるのって、ヘンな気分・・・。
雪乃先輩は、突然切りだします。
「すみません、遙クン、お借りします」
!?
お母さんも、ビックリ。
「え・・・遙、一体・・・」
ボクは上手く答えられない。
先輩が、かわりに。
「今、両親がイタリアに行っているもので・・・わたし一人では、心細いんです」
と、ちょっと切なそうな笑顔で。
お母さんは、ちょっと考えて、
「・・・そう言う事なら、ねぇ・・・。でも、いいの?遙をお邪魔させちゃって・・・・・・」
お母さん、ヘンな顔してる。
雪乃先輩は笑顔で、
「いいえ・・・お邪魔だなんて。わたしからお願いしたんですし・・・」
と、丁寧に答えます。
「じゃあ遙、雪乃さんに迷惑掛けちゃダメよ?それに、女の子なんだし・・・」
・・・お母さん、ちょっと心配そう。
「ハルカなら大丈夫よ♪」
雪乃先輩は、ボクをお母さんの目の前で、ぎゅっと抱きしめます!
うわ、恥ずかしい・・・・・・。
「まぁ、仲良くしてもらって・・・ありがとうね、雪乃さん」
お母さんも、ちょっと照れちゃってるじゃないかぁ!
まったく、もうっ!
ボクたちが家を後にするとき、お母さんはボクに言いました。
「いい?絶対ヘンな事とかしちゃ・・・」
と、念押し。
ボクだって、絶対そんなことしないもん・・・。
すると、雪乃先輩がそのやり取りを見て。
「あ、うちの両親には、ハルカを泊める事言ってありますから!」
なぁんて!
・・・・・・両方の親公認っていうのも、なんだかヘンな話ですけど。
そして、ボクたちは、夏の終わりの白い道を歩き始めました。
二人、ならんで。
「ハルカのお母さん、やさしい人だね」
雪乃先輩が、ふと言いました。
ボクは、うなずきます。
「うん・・・ホントにやさしくて、大好き」
思わず、言っちゃった・・・。
すると、雪乃先輩がちょっと悪戯っぽく、たずねます。
「じゃあハルカはわたしとお母さん、どっちが好き?」
・・・先輩ってば、イジワル。
「ちょっとまってよ!だって、お母さんへの『好き』と、雪乃先輩への『好き』は、別物ですよ!?それを比べるなんて・・・・・・」
と、あわてて言います。
するとその様子が面白かったのか、クスクスと笑って。
「そうだよねぇ・・・聞いたわたしが悪かった、かしら?でも・・・・・」
・・・・・・雪乃先輩は、ボクをまたぎゅっと、抱きしめて。
「でもね?わたしは、世界で一番、ハルカが好き・・・・・・」
耳元で、ささやくんです。
だからボクは、またドキドキしてきちゃって・・・・・・。
「せ、先輩ッ!?ボクも、です・・・・・・」
ちょっと困っちゃったけど。
ボクも、ぎゅっとし返します。
また時間が止まったみたい・・・・・・。
雪乃先輩といると、いつもこんな調子。
雪乃先輩の家につきました。
「そういえば・・・マキトさんはまだ帰ってこないんですね・・・」
玄関わきの、誰もいない応接間を覗いて、思わずたずねます。
雪乃先輩は苦々しい表情で、
「いまは両親ともいないから、帰ってきたら追いだすつもりよ?まったく、兄さんと二人っきりなんて何されるか分かったモンじゃ・・・」
と、つぶやきました。
「・・・男の人ってなんか信用できないのよ・・・特にマキト兄さんは」
雪乃先輩、不機嫌そうに言います。
「でもハルカは、別だからね?とっても素直で、可愛い・・・・・・」
・・・なんだか、フクザツ。
「先輩?ボクだって一応男なんですからね?いいんですか、こんなホイホイ呼んじゃって・・・」
さすがに、気になりますよぅ・・・。
でも、先輩は平然と。
「だって、ハルカだもん」
・・・う〜ん。
そう言われちゃうと、なんだか弱いなぁ・・・・・・。
とにかく、こんな風にして、先輩とボクの奇妙な同居?生活が始まったんです。
ふと、雪乃先輩が、壁に貼りっぱなしになっていたカレンダーをめくります。
そして、日付を見て。
「そっか・・・あと、一週間かぁ・・・・・・」
・・・ちょっとアンニュイで、メランコリックな雪乃先輩の横顔。
少しだけ、切ない。
「・・・終わっちゃうね」
ボクも切なくなって、言いました。
・・・だけど雪乃先輩は、すぐに満面の笑顔になって。
「・・・ハルカ?まだわたしたち、1年目よ?これからじゃない・・・・・・」
そして、ボクをやさしく、抱きしめました。
誰もいない、二人っきりの部屋の中。
また、ボクの心臓、ドキドキしてくる。
・・・そっか、まだ初めての、夏。
先輩とボクってば、まだまだコレからなんだなぁ・・・・・・なぁんて。
そして先輩はふっと離れると、ボクにふかぶかとお辞儀しながら。
「じゃあコレから一週間・・・よろしくね?ハルカ・・・・・・」
その声に、その仕草に、ボクは耳まで赤くするほど照れちゃって・・・・・・。
「こ、こちらこそっ!?」
また、すっとんきょうな大声で答えちゃう。
そんなボクを見て、先輩はクスリと笑うんです。
「あ〜、ハルカってば何かしこまっちゃってるの?いいのよ、普段通りで。いつも通りで・・・・・・」
そんな、いつも通りの笑顔の、雪乃先輩。
でもボクは、やっぱり普段と違う感じに、ドキドキしっぱなしで・・・・・・。
コレから一週間、雪乃先輩と一緒。
いろいろちょっとだけ不安だけど、でも凄く楽しみです。
それに、今から胸が、ドキドキしっぱなし・・・・・・。
2.
「じゃあハルカ、買い物いこっか」
夕暮れ時。
すっかり外は真っ赤な夕日に照らされて、キレイ。
でも、蝉の声がうるさいです・・・・・・。
「はい・・・どこ、行くんですか?」
ボクはちょっぴり楽しみで、聞いてみました。
雪乃先輩、いつもどこでお買い物してるのかな・・・・・・。
今聞いておけば、お母さんにお使い頼まれたときに、会いに行けるし。ね?
でも・・・雪乃先輩は、イジワルでした。
「えへ、秘密♪」
なんて、悪戯っぽく笑いながら。
・・・普段なら、絶対に見せないような顔。
「あー、先輩がそんなおちゃめなこと言うなんて珍しい・・・」
思わず口から出ちゃいました・・・先輩、怒っちゃうかな・・・・・・。
でも意外にも、先輩はただボーゼンとしていました。
「・・・雪乃先輩?」
「・・・あ」
すぐに我に帰って、きまりの悪そうな照れがお。
こんな雪乃先輩、すっごく可愛いんですよ!?みんなにも見せてあげたいくらいなのに、先輩ってばボク意外の人にはぜったいこんな顔しないんだもんなぁ・・・・・・。
「・・・どうしたの?」
やっぱりぼんやりしてると、ちょっと気になる。
先輩はやっぱり照れ臭そうに、
「・・・ううん、ハルカに見とれてた・・・ヤだなぁ、わたしったら・・・・・・」
・・・なぁんて、耳まで真っ赤な雪乃先輩・・・。
そう言われた、ボクの方まで、頭のてっぺんからつま先まで真っ赤になっちゃうじゃないですか!!まったく、もうっ!!
「そうだ、せっかくだから・・・ハルカ、コレ着て?」
まださっきの余韻でドキドキ、息を切らしてるボクに、雪乃先輩はあっけらかんとボクに服を手渡します。
ピンク色で、ふりふりひらひらの、思いっきり女の子っぽいワンピース。
「・・・うわ、コレは・・・」
ちょっと、引いちゃいます・・・だってボク、男ですよ!?
でも雪乃先輩は、そんなボクの反応に、さみしそうに。
「・・・だって、似合うと思ったから・・・ダメ、かな?」
ボクの目をじっと見つめる。
雪乃先輩の、少し潤んだ瞳・・・・・・。
「・・・わ、わかりました・・・着ますよぅ」
・・・あの瞳で見つめられちゃったら、やっぱり勝てる気がしません。
どうにも逆らえない、だってボクは雪乃先輩が大好きなんだもん・・・・・・。
お風呂場に入って、着替えます。
着替え終わったボクの姿を見て、先輩はちょっと照れた、うれしそうな顔。
「あ・・・やっぱりハルカ、似合う・・・・・・可愛い」
なんて、ちょっと赤くなった笑顔で、ボクの背中に細い腕を回すんです。
そして、ちょっと胸が、当たっちゃったりなんかして・・・。
ボクは恥ずかしくなっちゃって、
「せ、先輩・・・胸が・・・・・・」
と、やっとの思いでかすれ声で訴えたのですが・・・。
「ハルカ、気にしないでいいよ・・・・・・」
って、耳元で少し切なげにささやくんです、雪乃先輩・・・・・・。
それじゃ、意味無いよぅ・・・・・・どうしよう?
なんだか最初っから少しどたばたしたけれど、やっと準備を整えて。
「じゃあ、バッグも持ったね?」
と、お揃いのバッグを抱えて。
気が付けば、もうお星さまが顔を出して。
そして、けたたましい蝉の声に混じって、どこか懐かしい虫の声。
「・・・気が付けば、もうこんな季節かぁ・・・」
先輩が、すこし憂鬱そうに言いました。
本当に、切ない横顔。
雪乃先輩、センチメンタルな。
「・・・秋の虫、嫌いですか?」
ボクはそんな先輩を覗きこむようにして、質問します。
先輩はにっこり笑って。
でも、その笑顔、少し寂しげに・・・。
「・・・スキよ?でもどこか、さみしげなのよね・・・この頃の虫の鳴き声」
・・・なるほど、ボクも少しだけ、納得しました。
「ちょっと遠いけど、良いかな?」
玄関で靴をはきながら、先輩はボクに聞きました。
「歩くんですか?いいですよ、先輩といっしょかぁ・・・・・・」
ボクは少し、わくわくして。
でも先輩は念を押すように。
「・・・30分くらい、歩くよ?」
と、ちょっとニヤニヤしながら。
でも、そのくらい、どうってことないもんね。
「全然大丈夫だモン・・・」
ボクは雪乃先輩の腕に抱きついて、言いました。
すると、ちょっとヘンな顔しながら、
「ハルカってば・・・ちょっと、甘えんぼ☆」
なぁんて、言うんですよ・・・?
ボクは甘えんぼじゃなくって、雪乃先輩が大好きなだけなのにィ・・・・・。
「じゃ、いこっか」
くっついたままのボクに、先輩は笑顔で言いました。
ボクも大きくうなずいて。
足取り軽やかに、二人並んで、夜の道をお散歩気分。
「そういえば、どうして先輩・・・帰ってきちゃったの?」
ちょっと、気になって。
折角のイタリア旅行なのに、ねぇ?
すると先輩、苦笑いしながら。
「だって旅行って言ってもオッサンだらけだし、別に前行ったことある場所ばかりだし、それに夜は酒盛りばかりでうんざりしたのよ」
と、言います。
でも、それで帰ってきちゃうなんて、ねぇ・・・。
「先輩ってば・・・・・・」
「それにね?」
・・・突然、ボクに抱きついて、キスします・・・。
「・・・一週間もこうできないのよ?わたし、堪えられない・・・・・・」
・・・キスした後、ちょっとだけ泣きそうな顔で、ボクに言いました。
ボクもちょっと泣きそうになりながら、
「・・・ボクも、すごく寂しかった・・・だから、うれしいです」
なんて、言っちゃって。
顔が熱くなっちゃいます。
「そっか、それは悪い事しちゃったね。でももう、大丈夫だから」
雪乃先輩は、ボクの頭をやさしく撫でました。
その感触が、すごくうれしかった。
「・・・そういえば、イタリア行ったんですよね?」
「うん」
イタリアと言えば・・・・・・ッッッ!!
「ジェロニモ・ジャコモッティのお店には行きましたか?」
ボクの憧れの、ジェロニモ・ジャコモッティ!
でも、先輩は少し憂鬱な表情で。
「それどころじゃなかった・・・父さんってば真っ昼間から会社の専務と酒ばかりで・・・・・・最低」
「あー・・・」
ちょっと、残念。
結構な距離を歩いて、少し足が痛くなっちゃいました。
ちょっとだけへこたれ始めたときに着いたのは、商店街でした。